2010年第一回審判講習会
今年も、冬期間恒例の審判講習会が開催された。社会人野球の審判員が冬期間の勉強会と称して始まった講習会も13年目を迎えたとのことである。私も、この講習会の存在を知り、参加するようになって7年程度経った。1月~3月までは座学を中心に実施され、4月はシーズンイン直前の実地講習会となる。北海道は、4月上旬よりグラウンドが使用可能となり、5月のゴールデンウィークからは一気に各クラスの大会が始まるため、野外での審判実技のトレーニングは4月に集中する。この月が一年の成果を左右すると言うことである。
それまでに、過去の事例などを参考にルールの勉強やメカニクス、アンパイヤリングなどの座学を行い、頭のトレーニングをしておくのである。野球の審判は、実際にはグラウンドでの判断や裁定を素早く下すことが重要となり、実技のトレーニングが最も速効性がある。しかし、ルールの解釈やメカニクス・アンパイヤリングの基本などは、じっくりと時間を掛けて頭を洗脳する必要があると考えている。
意外に、自分自身が知っている野球の「規則」と「公認野球規則」には違いがあるものである。特に、野球のプレイヤーを経験している審判員ほど、その差異は顕著であり、審判員見習いの頃には、自分の知識・経験と公認野球規則のギャップに悩むようである。その点、私のように野球経験が小学校時代しかない審判員は、ルールブックから野球入門するため、不要な予見や予備知識に左右されることが少ない。
日本の「公認野球規則」は、MLBの「Official Baseball Rules」を忠実に再現しようとしているが、「野球」と「Baseball」の違い、「日本」と「アメリカ」の文化の違いから、解釈に微妙な差異が生じているのも事実である。つまり、日本野球の常識が世界ではまったく通じないのである。それどころか、日本野球は「アンフェアの代表格」のように扱われているらしい。何とも情けない話である。
それもこれも、審判員の毅然さが不足していることも一因ではあるが、その根底にはプレイヤーも指導者もファンも、審判員への畏敬の念が薄いことが根強く蔓延っていることがあるのであろう。
今年の第一回講習会の概要は以下のとおりであった。
1.死球の「故意」に対するジャッジ基準について。球審の判断基準を、当該試合で早めに明確にする。
2.空振りの際の捕手の捕球がダイレクトか否かの処置。四氏協議により速やかに処置。塁審から積極的にコールするべき。打者に対峙する塁審およびインフィールド時の二塁塁審は積極的にコールするべき。それは事前のミーティングで確認。四氏協議はできるだけ速やかに結論を出す。
3.バットボーイの妨害。バットを拾いに来た選手が、本塁への送球に対して妨害となった場合、その後のプレイによる守備側の不利益を取り除くように処置する。本塁前に出て、バットの処理をする行為は「妨害」と考える。内野手の後ろにいる審判員は「石ころ」。前は「インターフェア」となる。
4.盗塁時の打者による捕手の守備行為へのインターフェア。スイング無しで捕手の前に出る行為は「妨害」以外に考えられない。スイングして前に出た場合も故意の有無に関係なく「妨害」とする勇気を持つ。勇気を持ってジャッジをしたら、その行為自体が無くなる。
5.死球かファウルボールか判定し難い打球について。ファールゾーンであれば、ただちに「ボールデッド」として打者の様子で判断。打球がフェアゾーンであれば、ボールインプレイで試合を流し、打者の様子を伺う。
6.一塁ベース付近での接触。接触した時点で「ポイント」を打ち、オブストラクション(b)項を表示する。
7.併殺崩しを狙った走者の行為。ピポッドマンに対してスライディングや手を挙げる行為で妨害した場合は、故意の有無に無関係で「守備妨害」として併殺を成立させる。走者に送球が当った場合は、その時点でボールデッドとして「妨害」を適用するべき。
8.リバースダブルプレイの際の一塁塁審のコール。打者走者の一塁でのフォースアウトが成立した後に、他の塁でタッグプレイによる併殺が行われた場合、一塁塁審は、一塁でのフォースアウト成立を「アウト・アウト・アウト」などの繰り返しや、いつもより大きな発声による「アウト」コール、または「アウト」のジェスチャーを残す方法により、次のタッグプレイが行われる塁の審判員に周知させる。
9.ハーフスイングのリクエスト基準。ハーフスイングのリクエストに応えようという大前提があるが、これを逆手にとられてグリップが動いた程度でリクエストをしてくる捕手がいる。球審が自分なりの基準を設けて、リクエストに応えるか否か判断をすることが良い。

以上のほかに、「【7.09(e)】の解釈について」や「内野ゴロで一塁への送球が逸れて、一塁手の足がベースから離れたばめんで、打者走者も一塁ベースを踏まずに通過した場合のアンパイアリング」など、非常にマニアックな話題もあった。また、クロックワイズメカニクスの変更点についての概要が報告された。
これらについては、後日私見を述べようと思う。
今年も、審判員の正月が明けた。

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