思い込みと勘違い
審判はルールの番人として、担当した試合をコントロールすることが求められている。
礼儀を重んじ、公平で厳格でなくてはならない。

アマチュア野球では、審判員になるキッカケは様々あるだろう。高校まではプレイヤーとして頑張る道は沢山あるが、その先のステージでプレイヤーを継続することは、なかなか困難である。それでも、大好き野球を続けるために、草野球に身をおく方々も多いであろう。このタイミングで、審判の道を選択する人もいるようであるが、かなり希少な方々である。

私が所属する組織は中学生がプレイヤーであるため、その父兄の方々が審判員としてグラウンドに立つことが圧倒的に多い。かく言う私もそうである。
父兄審判の方々は、少なからず野球経験があるか、野球ファンであることから、野球の常識的なルールは知っている。しかし、そのベーシックな常識だけでは、判定を下す立場となった場合、瞬時にルール適用することは、なかなかできないのが実態であろう。ゆえに、トラブルやサプライズがあった時には、パニックになってしまうのは当然なのである。プロ野球ですら、審判の判定に関するトラブルが絶えないのであるから、細かいところをツツき出すとアマチュア野球は試合にならないであろう。

初めて審判としてグラウンドに立って一試合ジャッジを担当した日のことは、ほとんど覚えていないが、毎年春先に新人審判員が緊張した面持ちでぎこちなくジャッジしている姿を見ると、自分の初ジャッジが目に浮かぶようである。

審判員は座学での勉強も重要であるが、グラウンドで学ぶ経験が色々なことを考えさせてくれる。頭の中では理解していることも、いざ目の前で起こると「エアポケット」に入ったような状態に陥ることも、しばしばである。それも、私一人がエアポケットにはいるのではなく、クルー全員が狐に摘まれるような事態が起こるのである。

決してミステリーではないが、実際に起こってしまった事例を今回から数回にわたり紹介しようと思う。

ダブルプレイは、攻撃側のチャンスが一瞬にして消滅してしまい、守備側は一気に情勢逆転することができるプレイである。野球は流れを重視する競技であり、流れを掴んだチームがスコア的に負けていたとしても、優勢に感じることができる場面さえある。それを作り出すプレイのひとつが、ダブルプレイである。
ダブルプレイは、広義的には「ワンプレイで二つのアウトが成立する」ことである。一番オーソドックスなプレイが、走者一塁で内野ゴロ併殺となるプレイであろう。一塁走者は、二塁でフォースアウトとなり、打者走者は一塁でフォースアウトとなるプレイである。
一方、こんなダブルプレイもある。走者二塁で、打者がライト前へ飛球を打った。二塁走者は安打になると判断し、三塁方向へスタートを切った。ところが、ライトが前進しスライディングキャッチによりダイレクトで捕球した。二塁走者は三塁コーチの指示で、慌てて二塁へ戻ったが、ライトから二塁への送球が早く二塁走者はアウトとなった。これでダブルプレイが成立である。

事例は、一死走者二三塁で打者はセンターへ後方へ飛球を打った。二三塁の走者はタッグアップの状態から、センターが捕球した(二死)のを確認してスタートを切った。センターはバックホームをしたが間に合わず、三塁走者は生還し、二塁走者は三塁へ達した。
ここで、守備側から「二塁走者の離塁が早い」とアピールがあり、二塁塁審はこれを支持して「アウト」を宣告した(三死)。
アピールプレイとはいえ、二人が連続してアウトとなった、ダブルプレイの成立である。ここで球審は、ダブルプレイでチェンジとなったため、「今の得点は無し」と本部に向かいジェスチャーをした。

このように文章にすると、「なぜ、無得点としたのか」と不思議になるが、思い込みと勘違いの両方がエアポケットに落とし込むことがあるのである。

ルールブックの【4.09得点の記録】の付記には、次のようにある。
【付記】第三アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者が本塁に進んでも、得点は記録されない。(1)打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき、(2)走者がフォースアウトされたとき、(3)前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。

今回のプレイは、走者二三塁の場面で、二塁走者がリタッチが早く「第三アウト」を宣告された。つまり後位の走者である。三塁走者の本塁生還が第三アウトより早かったのであるから、後位の走者のミステイクで得点を取り消されることはない。

これがフォースプレイであれば、話は別である。二死走者満塁で、打者が三遊間をゴロで破った。走者はそれぞれ進塁し、三塁走者は本塁に達したが、二塁走者が三塁ベース手前で転倒してしまった。これを見たレフトは三塁へ送球し、二塁走者よりも早く三塁手がベースタッチした。これはフォースアウトであり、第三アウトであるため、いくら三塁走者が早く本塁に達していても得点とはならない。

今年は色々な書籍や実例に触れる機会が多かった。我が師匠からも、貴重な書籍を預かっている。古きに触れ新しきを知るである。それらの書籍を読むと、走塁に関するアクシデント、ミスジャッジ、トラブル、サプライズが最も多いように感じている。これは走塁が得点に絡むことが関係していると思われる。
その時の判断ミスは、審判員・プレイヤーおよび観客も含めて、常識的な「思い込み」が「勘違い」を増長させているのかもしれない。

ベースボールルールは深く、味わいがある。

コメント

nophoto
菊水のデビル
2010年1月8日18:00

あけましておめでとうございます!!
いつもたいへん勉強になり、楽しくみさせて頂いてます。
今年も色々勉強させて頂きますので、ご指導宜しくお願い致します。

nophoto
山形 太郎
2010年1月12日13:12

新年おめでとうございます。
本年もご教授何卒宜しくお願いいたします。
今年も何とか野球テーマで子供と接していけそうです。

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索