遅延行為

2007年5月16日
私がまだ駆け出しの頃、大先輩の審判員が投手の一塁牽制に対して「That’s Balk」と叫んだ。その時私は、一体何がボーク行為なのかが分からなかった。投手は一度早い牽制球を投げた後、再び「間をとる」ように牽制球を一塁に投げた。その瞬間、大先輩は「ボーク」を宣告したのである。
試合終了後大先輩に解説を伺ったところ、返ってきた答えは「遅延行為によるボーク」であった。確かにルールブックには、投手のボークの中に「遅延行為」という項目がある。無駄な牽制球などが対象になるということであろう。走者が塁上かすぐ近くにいる場合、単に「間をとる」ために行う牽制球は「遅延行為」の対象となるのである。まして、牽制球が「山なりの送球」では仕方がない。
現在社会人の第一線で活躍されている審判員の方の経験談によると、「投手がロージンバックを触りに行って、一塁走者に対してロージンバックを投げる振りをした」際に「That’s Balk」としたことがあるらしい。確かに「その行為」自体には何の意味もない行為であり、闇雲に試合を遅延させているだけであるから「遅延行為」の対象となるのであろう。ということは、投げ手にボールを持たずに手を振ることも「遅延行為」となるのであろう。
緊迫したシーンで「間」が必要であることは理解する。それも「インターバルのあるゲーム」である野球ならではであろう。しかし、無駄な行為や意味のない行為を見逃すわけには行かない。
昨日も、こんなシーンがあった。1点差で終盤を迎えた試合で一死走者2・3塁。内野はマウンドに集まり「前進守備」を選択した。スクイズも考えられるケースであるが三塁手がベースから離れ、三遊間を詰めている。投手はセットポジションから三塁へ偽投し、返す刀で二塁へ偽投した。内野手はまったく動かない。これは立派な「遅延行為」である。投手は、内野手と協議して「前進守備」を選択したことを知っていたにも拘らず、塁から離れている三塁手や遊撃手に向かい「偽投」したのである。練習試合のため学生審判員であったことから「ボーク」はとられなかったが、公式戦であれば「立派なボーク」となるであろう。私がクルーに居たならば、練習試合といえ、有無を言わせずボークを宣告していたであろうが。
ここで問題となるのが、審判団のうち誰が一番良く見えるかである。球審はセットポジションに入った投手に集中しており、三塁手の位置関係まではなかなか見えていない。事前に守備位置を確認し、頭にイメージが出来ていればいいが、なかなか難しい。二塁塁審は投手を凝視しているが、前進守備のため外に位置(遊撃手の後ろ)しているであろうから、球審よりも状況が分かる。しかし、外に位置した状態からは、なかなかボークを宣告しにくいし、説得力も薄い。このケースは、一・三塁の塁審が良く見えているであろうから、この二人からのボーク宣告には説得力がある。
球審は全体が見える位置にはいるが、決して万能ではない。そして球審も塁審も「試合をスムーズに動かす」という意味では同じ責務がある。そう言う意味ではワンプレイに対する集中力は同じなのである。スタンドから観戦していると、色々と見えることが多く勉強になる。
プロ野球でも、一塁へ気の抜けた牽制球を投げる投手がいる。プロの審判員が勇気を持って取ってくれなければ、日本の野球レベルはいつまでも上がらないように思うのだが。今年のルール改正の観点から考えると、「遅延行為」は最も厳しく見られるべきなのであろう。心してジャッジしようと思う。

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