コーティシーランナー
まったく聞きなれない言葉である。
それもそのはず、プロ野球では絶対に登場しない「ランナー」であり、当然のように野球規則3.04で明確に否定されている「走者」である。
しかし、アマチュア野球では条件付きで認められている。野球規則にはないのであるから、各連盟・団体などや大会ごとで任意に決められている、いわゆる「グラウンドルール」のような走者である。
「臨時代走」といえば、聞き覚えがあるであろう。今週末より開催される高校野球では頻繁に使用される走者である。
この特別ルールの根底にあるものを理解すれば、おのずとルールの使用方法が氷解するのであるが、それを理解しようとしない方々や誤った理解をされている方々が多いのには閉口する。
「臨時代走」の考え方の根底にあるのは、「できるだけ多くの選手を出場させてやりたい」などという親心ではない。単純に「試合進行をスムーズに行うため」である。
【高校野球特別規則】の第6項には、以下のように明記されている。
 試合中、攻撃側選手に不慮の事故などが起き、一時走者を代えないと試合の中断が長引くと審判員が判断したときは、相手チームに事情を説明し、臨時の代走者を許可することができる。この代走者は試合に出場している選手に限られ、相手チームに指名権はない。臨時代走はその代走者がアウトになるか、得点するか、またはイニングが終了するまで継続する。臨時代走者に替えて別の代走を送ることはできる。この場合、負傷した選手に代走が起用されたことになり、負傷選手は以後出場できない。
1.打者が死球などで負傷した場合。:投手と捕手を除いた選手のうち、打撃の完了した直後の者とする。
2.塁上の走者が負傷した場合。:投手と捕手を除いた選手のうち、その時の打者を除く打撃の完了した直後の者とする。

この特別ルールの勘違いには、次のようなものが多い。
①「頭部への死球にしか適用できない」:これは大きな勘違いであり、頭部以外でも、その後のプレイに支障がある場合、それを審判員が認めれば適用できる。
②「死球にしか適用できない」:これも大きな勘違いであり、走者が何かのアクシデントやプレイにより負傷した場合、それを審判員が認めれば適応できる。
③「守備側チームの了解が必要」:これも大きな勘違いであり、審判員が臨時代走を認めれば、その報告を守備側チームには行うが、その報告に対して疑義を申し立てることはできない。

こんなことがあった。中学シニアのトーナメントで、守備側チームは第一試合、攻撃側チームは第二試合を勝ち抜き、第三試合でダブルヘッダーの二試合目を闘うこととなった。ただし、第一試合は一方的な5回コールド勝ちであり、第二試合は延長戦を逆転で勝ち抜くというゲーム内容であり、疲労の程度は明らかに守備側チームが有利であった。
そんな中、第二試合終了後50分の休憩をとり「プレイボール」となった。
初回の攻撃で、一番打者が三遊間を破ったが、一塁へ走る姿に球審を務めていた私は「明らかな異変」を感じた。打者走者は、一塁へようやく達したが「両足を痙攣」した状態であった。強豪チームの中心選手であるから、身体はガッチリしているが、所詮は中学生である。
私は「臨時代走」を提案し、9番打者に走者となるよう措置をとったが、守備側チームよりクレームがついた。守備側チームの監督が「ルールを知らないのか」と噛み付いたのだ。「こんなことを許したら、足の遅い選手が、みんな足を痙攣させて、臨時代走となるだろう」というのである。
何を言っているのであろう。
いつも、そんなことばかり考えているから、そのような発想となるのではないか。
頑として「臨時代走」は認めないと頑張り、「交替させろ」と言わんばかりである。相手の中心選手が、初回にいきなり交替となれば「ニンマリ」とでも考えたのであろうか。腹の底を疑いたくなる。
私は致し方なく「それでは治療です」ということで、試合開始からいきなり中断となった。
私が大会規約を十分に理解していたら混乱は避けられたと思うのが反省点ではある。
ルールの根底は大切である。

ちなみに、ハワイの大学チームが遠征したときの逸話がある。オープン戦ではあるが、次のような特別ルールを提案したらしい。
「二死で捕手が出塁した場合、攻守交替をスムーズに行うため臨時代走を採用する。その代走者はベンチ入りメンバーより選出する。」
合理主義のアメリカらしい提案であるが、関西遠征では一度も使われなかったようである。


コメント

nophoto
山形太郎
2009年8月5日7:39

解説ありがとうございます。「アバウトに」で ほぐれた 様な気がします。確かにフェアファール、アウトセーフ、スイングのジャッジがありますので自塁判定が優先という事と理解しました。 しかしボークルール判定は非常に難しくこれが一通り理解出来てくればやっと半人前ぐらいかなという今日この頃です。今後とも宜しくお願いいたします。

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