光と陰
久し振りに嬉しい場面と遭遇した。教え子たちのチームが優勝を果たしたのである。何とも言えない高揚感に包まれた。練習試合などでもお世話になっているチームであり、関係者にも顔見知りが多い。近年は三季連続で負け試合を観戦していたため、自分自身で「貧乏神」のように感じ、今季はなかなか球場へ足を向けられなかったが、準決勝ともなると行かないわけにもいかなくなった。柱の陰から、こっそりと見ていようと考え球場へ出向いてみると、いきなり最も親しい父兄に発見されてしまった。悪いことではないが、隠し事はできないということか。
結局は、当たり前のように決勝戦も応援に行くこととなり、別の球場で行われていた試合の球審を務めてから、大急ぎで決勝戦の球場へと向かった。
駐車場になかなか入れず、球場内に到着したのは試合開始5分前。座る所も見つけられず、一番上の通路をウロウロしていると「プレイボール」となってしまった。
何とも言えない緊張感の中、試合速報を息子などにメールしながら、あれよあれよと試合は終盤へと流れていき、最後の打者を三振に斬って試合終了。息子への最後の試合速報は「優勝したぞ」になってしまった。
それにしても、歓喜の応援団の中でグラウンドに背を向けて、冷静にシャッターを切っている学校関係者の方には頭が下がった。学校通信やホームページなどに掲載されるのであろうが、その写真を見ているときには感じない「頭が下がる」思いを感じていた。

この年代の子供たちは、私にとって最初の教え子と言ってもいい世代であり、ルールのイロハを共に学んだ世代でもある。皆が同じチームとも行かず、公式戦などで対戦する姿を観ていると胸が熱くなり、苦しくなる。この試合が永遠に続いてくれとも願いたくなる。対戦が決まってからは、その日が来るのを楽しみにしているのであるが、いざその日になると直視できない自分がいるのである。
それでも互いに切磋琢磨して力を出し切れる状態であれば、勝負事の常はあるものの、「互いに良く頑張った」と言えるのが救いとなるが、そうともいかない事があるのも致し方ないことなのであろうか。

この大会で、あるチームの主将が試合後に不調を訴えた。その原因は、明らかに「あるプレイ」であることは明白のようである。私は、その場面を見ていないので見聞きした情報だけを伝える。
その選手は二塁手である。ある回の走者一塁の場面で、二塁ゴロが放たれた。二塁手がゴロを処理した瞬間に一塁走者が激突した。二塁手は卒倒し、一塁走者も倒れた。そのプレイに対して遊撃手が激昂し、一塁走者に掴みかかったようである。この一連のプレイで、一塁走者が負傷退場し救急車で搬送された。

野球は、守備側のチームが9人グラウンドにいるところへ、打者が一人で立ち向かう不公平なゲームである。攻撃側は最大でも4人までしたグラウンドの同時に立つことができない。それでも三つのアウトが獲られない限り、いつまでも攻撃を継続できるという特殊性もある。また、野球は相手チームより多くの得点を奪い合うゲームであるが、そのためには四つの塁を順番に踏む必要がある。それは、守備側チームの隙間を縫う様に走り抜けなくてはならない。だから試合の要所ではコンタクトプレイが多々観られるのである。
そのたびに、大リーグのように乱闘騒ぎばかりだと試合が進行しないため、どちらかにアドバンテージを与えている。それが、野球のルールの根幹なのであろう。
走者の進塁優先権などの考え方や、インターフェアやオブストラクションの基本理念もしかりである。また、ボークなどの考え方はシンプルであり「投手が走者の進塁を阻むため、走者を騙す行為」をしたと審判員が感じたら「ボーク」なのである。なんともシンプルである。

野球の根幹の一つとなっているのが「守備優先」の考え方である。走者は走路を走る権利があるが、走路は守備の範囲内にもある。丁度、走路部で内野手が打球を処理することは珍しいことではない。そして、そこに走者が走ってくることも珍しいことではない。私が大学生の時、クラスでソフトボールが流行した。教授に懇願して授業を休講にし、ソフトボールに明け暮れたものである。ある試合で、遊撃手をしていた私はゴロを華麗に捌こうとした瞬間、真横から衝撃を喰らった経験がある。二塁走者が体当たりをしてきたのである。確かに、走路で打球処理をしていたが、ゴロを捌くことに腐心していた為、走者との位置関係はまったく認識していなかった。
この経験から、野手は打球を裁きながら走者を避けることは出来ないが、走者は進塁しながら野手を避けることが出来る、という野球の根幹を知ることとなった。

あるチームの主将である二塁手は、後日手足の痺れを訴えて入院した。今も握力が戻らない。最後の夏を目前にして、涙を流しながら抽選会場で、握力の落ちた手で抽選をしていたようである。
何とも、切ない。本人が一番辛いであろう。それを思うと・・・・。

ラフプレイの怖さを審判員も認識し、そのようなプレイをした選手に対しては、毅然たる態度で臨むべきであることを心に刻みたい。

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