ミーティングの予告
試合前のミーティングでベテラン審判員の方が、色々な事例を話してくれることがある。サプライズが発生した場合のルール適用などや、外野飛球に対するクルーの動き方など様々であり、聞き流すには勿体ない話が多い。その場でメモを取ることができなくても、帰宅してからルールブックやメカニクスブック片手に記録するようにしている。
先日も珍プレイのようなジャッジについて話題になった。そんなサプライズが発生したら、絶対にパニックになるだろうと話し合いながらグラウンドに立った。
グラウンドに立つ際の私の口癖は「何かあれば良いな」である。サプライズを望んでいるような言葉を口にすることで、何も無いことを願っているのである。
この日も、同じように「何かあれよ」と口走り、審判控え室を出た。試合は1点を争う好ゲームである。いわゆる「実力の噛み合った試合」である。走者は出るが、タイムリーが出ない。ここぞの場面で好プレイが出てピンチを逃れる。そんな試合である。
場面は一死1・3塁。1点を勝ち越して追加点を狙う場面である。スクイズやランエンドヒット、ダブルスチールなど、様々な作戦が考えられるケースであるが、打者は2ストライクと追い込まれた。次の投球で、1塁走者がスタートを切った。ややボール気味の外角のストレートを打者は強振したが、あえなく空振り。捕手は1塁走者の盗塁を阻止しようと2塁へ送球した。その時、打者が空振りの余勢で本塁ベースの前に立ってしまった。
「インターフェアランス!!」。
捕手の送球は2塁方向へ投じられたが、3塁走者をけん制して二塁手がカットしたため、1塁走者は2塁に達した。
捕手が盗塁を阻止しようとする送球をする際の打者による守備妨害の場合、走者の盗塁が失敗した場合は、守備妨害がなかったものとしてゲームは進められる。一方、走者の盗塁が成功した場合には、守備妨害を適用して、「打者は守備妨害でアウト、走者の進塁は認めない」となる。

野球規則6.06「打者の反則行為」(C)打者がバッタースボックスの外に出るか、あるいはなんらかの動作によって、本塁での捕手のプレイ及び捕手の守備または送球を妨害した場合。しかし例外として、進塁しようとしていた走者がアウトになった場合、及び得点しようとした走者が打者の妨害によってアウトの宣告を受けた場合は、打者はアウトにはならない。
【原注】打者が捕手を妨害したとき、球審は妨害を宣告しなければならない。打者はアウトになり、ボールデッドとなる。妨害があったとき、走者は進塁できず、妨害発生の瞬間に占有していたと審判員が判断した塁に帰らなければならない。しかし、妨害されながらも捕手がプレイをして、アウトにしようとした走者がアウトになった場合には、現実には妨害がなかったものと考えられるべきで、その走者がアウトとなり、打者はアウトにはならない。そのさい、他の走者は、走者がアウトにされたら妨害はなかったものとするという規則によって、進塁も可能である。このような場合、規則違反が宣告されなかったようにプレイは続けられる。

今回のケースは、ちょっと様相が違う。打者は既に空振り三振でアウトとなっているから、「アウトになった打者による守備妨害」が適用されるのである。この場合は、守備妨害により「アウトになった打者」を再びアウトにできないことから、守備の対象である走者がアウトとなる。その対象が不明確な場合は、本塁に最も近い走者をアウトにすることとなる【野球規則7.09(e)参照】。
では捕手からの送球をカットマンが捕球した場合は、守備の対象は誰になるのであろうか。今回は一死で発生した妨害であったため、ダブルプレイで三死となりチェンジであったが、無死1・3塁などの場合はどちらか一人の走者が残ることとなる。
サプライズの後に、トラブルとなりそうな事例であった。

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