塁審の奥深さ
昨年のシーズン終盤に、何度か続けて塁審に立つ機会に恵まれた。それぞれのポジションで面白さを再確認することで、その重要性も認識させられた。特に2塁に立つ機会が多かったが、クロックワイズ・メカニクスやカウンタークロックワイズ・メカニクスの動きの意味を気付かされることが多かった。ようやく、それらを見える余裕が出てきたということかもしれない。
講習会などで、ケーススタディによりメカニクスの反復をやるが、ある程度打球方向や結果が想定された中での動きであるから、頭で考えながらでも十分に動くことができる。しかし、頭で考えながら動いていては、実戦にて起こる突発的な打球方向に対して「立ち遅れる」ことになってしまう。
審判員の動きは「審判メカニクスハンドブック」などで、走者の有無や外野への打球方向により紹介されている。その根底に流れるのが「MLB審判マニュアル」であり、永年の試行錯誤から体系化されたものが紹介されているのである。アメリカは合理主義の国であるから、無駄や無理を省き、確率の高い最良のポジショニングをするためにメカニクスを作り上げたことが容易に想像できる。
私を含めアマチュア審判員の多くは、このメカニクスを鵜呑みすることからグラウンドに立つのである。その動きの意味を考えることもなく、教えられることもなく。実情は教えられているのであろうが、理解できていないのが真実かもしれない。私の師匠を含めた先輩諸氏は、教本や自分たちの経験からベーシックな審判員の動きを伝授しようと試みてくれていたが、教え子の理解力が不足しているため、長い年月を要してしまったようである。
それでもグラウンドに立たなくては試合が始まらない。審判員がいなくては試合が始まらないのである。
審判メカニクスをメモ用紙に書き込み、胸に忍ばせてグラウンドに立つのである。いざという時は、そのアンチョコを見ようと思いながら出陣するのであるが、実際には見たことがない。見ている余裕がないのである。その顛末は、ドタバタ劇であるのは想像されるとおりである。グラウンドに審判員として立ち始めた当初は、皆この程度であるようである。
審判員の公式戦デビューは、ほとんど3塁塁審から始まる。3塁は「アウト・セーフ」よりも「フェア・ファール」のジャッジメントが多いポジションである。一試合のうちに一度も「アウト・セーフ」をコールしないこともある。緊張のあまり、球審のハーフスイングのリクエストにすら応えられない新人も多い。試合前に打合せをした「インフィールドフライ」のサインすら気付かない審判員も多い。それほどの緊張感の中で2時間あまりを過ごすのであるから、メカニクスが完璧にできることなど、期待する方が野暮である。
3塁は本塁に最も近いゆえに、得点の確率が高いのは周知のとおりである。ゆえに、トラブルが多いポジションでもある。この塁で起こるプレイによる「アウトか」「セーフか」は、勝敗の趨勢を左右しかねないからであろう。
こんな重要なポジションに、なぜ新人がと思われるであろう。理由は、ジャッジの少なさと審判メカニクスの単純さにある。外飛の判定は、無走者または単独3塁の場面ではライン際、その他の場面はセンターから3塁側を担えばよく、非常に分かりやすい。唯一、無走者の場面で二塁塁審が外飛を追った際に、2塁のカバーリングに走り込む事がメカニクス的な動きであろう。
これが出来れば100点が貰えるが、これが出来ないのが経験の浅い審判員である。
なぜ「審判4人制」で、このメカニクスが採用されているのかを理解できれば、自然と動きが身に付くのであろう。
昨年の終盤に塁審の奥深さを感じ、高いモチベーションを保ちつつ、新たなシーズンが目前に迫ってきた。今年も、大いに楽しもうと思っている。

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