ベテランの凄み
打撃妨害、守備妨害は二度、そしてボーク。

一試合のうち一度あるかないかのレアプレイが、たった一試合で四度もあった。それも「立て続けに」である。そして、それをジャッジしたのはベテラン球審であった。
「凄み」さえ感じた圧倒的な存在感であった。クレーム好きの両監督も唖然呆然の電光石火のようなジャッジであった。

打撃妨害は「打者が打ちにいった際に、捕手のミットに触れた」状態であった。野球規則には次のようにある。

【6.08】打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(c)捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。

今回の場合は、空振りした際にバットがミットに触れたため、その時点で「ボールデッド」として打者に一塁を与えた。これが妨害にも関わらず打ってしまった場合には、少し事情が違ってくる。プレイが一段落するまで見守り、打者および走者が少なくとも一個の進塁が確認された場合は、そのままボールインプレイで継続される。また、妨害にも関わらずプレイが続けられて、一段落した後に、攻撃側監督は「妨害行為によるペナルティ」の代わりに、その後のプレイを選択することができる。
例えば、無死走者二塁でバントをした際に、打者は捕手に妨害されながらも走者を三塁へ送り、一塁でアウトとなった。ここでボールデッドとなり、球審が「インターフェア」を宣告し、打者走者に打撃妨害で一塁を与え、無死一塁・二塁で再開しようとするが、攻撃側監督は「送りバントによるプレイ」を選択する権利があり、一死三塁での再開を球審に通告することができる。これは、攻撃側監督の唯一のアピールプレイかもしれない。

守備妨害は二度とも、捕手の盗塁に対する送球を打者が妨げるプレイであった。
一度目はバントの構えからバットを引いた状態で、捕手の送球に合わせて身体を本塁ベース上へ出していく行為である。文章にして書くと、如何にも「妨害」に感じるであろうが、実際には瞬時に起こる行為であり、打者が無意識でやっている(少年野球の頃からの習性なのであろう)ケースが多いため、捕手も妨害と感じていないことが多い。守備側が妨害と感じていないのであれば「インターフェア」を採択する必要がないのではないかと思われがちだが、世界基準では非常にアンフェアな行為として嫌われている。それよりも、「そんな事をして、何が楽しいのか」と不思議がられるようである。「日本人は、ずるい事をして楽しんでいる」とも思われている。

もう一つの守備妨害は、何とも難しい判断であった。
走者二塁で打者のカウントがB3―S2。次の投球で走者が三塁へスタートを切った。投手の投球は右打者の外角に逸れたため、打者は四球となり喜び勇んで一塁へ向かおうとした。捕手は右打者の外角に外れてボールを捕球し、三塁へ送球しようと打者の前方へステップした。ここで、捕手と打者が接触したため、球審は「インターフェア」を宣告した。
この裁定は難しい。翌日も話題になった事例である。
打者は四球になった時点で、安全進塁権を得た走者になっている。二塁走者の盗塁と四球は関係ないから、捕手は三塁へ送球しようとするが、この捕手の送球動作を打者走者が回避しなくてはならないのであろうか。例えば、捕手の送球が一塁へ走り出した打者走者に当たり、ファール地域を転々とし、三塁に盗塁した走者が一気にホームインする場合もあるであろう。これは守備側の不利益が大き過ぎる。しかし、打者走者は四球により安全進塁権を得ているから、ボールになった瞬間に一塁へ走り出し打者席から出るであろう。打者席から出て捕手の守備行為を妨害した場合は「守備妨害」とはなるが、この場合は打者席から出ることの意味が違う。捕手の捕球位置や送球動作、打者の一塁への動き出しなど色々なケースがあり、すべてを「インターフェア」とするには「四球を選んだ打者」が気の毒である。

こんなことを考えていると、打者は「四球」となったとしても、次のプレイが起こる可能性がある場合、「間を置いて」動いてくれるよう、選手達に指導しなくてはならないのかもしれない。

それにしても、ベテラン審判員の判断と処置の仕方には「凄み」を感じずにはいられなかった。あれも経験がなせる業なのであろう。

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