北海道の野球シーズンも終わりが近付いてきた。少年野球は、6年生が最後の試合に歓声を上げていることであろう。
しかし、毎年この時期なると嫌な記憶が蘇ってくる。息子の同級生が所属していた少年野球チームの最後の卒団大会で、監督が審判の裁定に不満のあまりフォーフィッテッドゲーム(没収試合)となったのである。実に馬鹿げた愚行である。6年生の最後の試合が没収試合で終戦とは、なんとも馬鹿な指導者である。子供達に野球を通じて何を教え、何を伝えなくてはいけないのであろうか。自分が納得できない場合は、周りに迷惑を掛けてでも自分の意思を貫き通す事が、チームスポーツで伝える事なのであろうか。
私が審判員をやり始めた頃の事件であったが、それ以来「反面教師」としている。審判員や指導者として子供達と接する機会が多いが、このようなことだけは絶対に避けなければならないと自戒している。
野球のルールには、いわゆる「抗議権」は認められていない。もちろん「抗議権」の定義も項目もないのである。
これに近い言葉としては、強いて言えば【4.19】提訴試合(プロテスティングゲーム)であろうか。提訴試合とは「審判員が野球規則に違反している事に対して、監督が審議を請求する時は、リーグ会長に対して提訴の手続きをする」ことであり、「審判員の判断による裁定に対しては提訴できない」ことも併記されている。ご存知のとおり野球規則は、大リーグの「Official Baseball Rules」に準じて作成されているため、「訴訟好き」のアメリカ人向けの言葉が登場するのであろう。この規則は、日本のルールブックには「アマチュア野球では認めない」ことが明記されているから、プロ野球だけのルールであると考えていいであろう。
これに似た言葉に「アピール権」があるが、これは守備側のみに認められた権利である。アピールとは守備側チームが攻撃側チームの規則違反を指摘し、審判員に対してアウトを主張し、その承認を求める行為である【2.02参照】。よく見かけるケースとしては、走者がタッグアップした際に「走者の離塁が早い」と野手が主張する行為であろう。
アピール権を主張できる期間は、次のように示されている。
①投手が打者へ次の一球を投じるまで
②たとえ投じなくても、その前にプレイをしたり企てたりする前まで
③イニング終了の際は、守備側の投手を含む内野手がファールラインを超えるまで
この期間を過ぎた場合は「アピール権が消滅」するのである。ゆえに、次の打者のプレイが始まってから、監督さんが「タイム、さっきのプレイはちょっとおかしい」などと言っても取り合ってはくれないどころか、試合を遅延したということで警告が発せられ、なおも執拗な場合は「試合から除かれる」こととなるのである。
攻撃側にはアピール権がないのであれば、不可解な裁定があった場合は「泣き寝入り」するしかないかというと、唯一それらしい権利がある。【9.02】(b)項に「審判員の裁定が規則の適用を誤って下された疑いのあるときは、監督のみが規則に基づく正しい裁定に訂正するよう要請できる」とある。「抗議」ではなく「訂正の要請」である。言葉面を見ただけでも、ソフトなイメージが容易に想像できるであろう。
しかしプロ野球の悪影響なのか、アマチュア野球でも勘違いをしている監督が多いのも確かである。大リーグで「口角泡を飛ばして抗議」した上で「Get Out」となるシーンをよく見かけるが、あれは監督が「退場」を覚悟の上で行っている行為である。大リーグの監督たちは「審判の裁定」が覆らない事を承知しており、それに抗議をした場合は「退場」となることも「百も承知」なのである。それでも、審判員に立ち向かうのは「チームを鼓舞するため」などという理由があるようである。実際、監督の退場をキッカケに試合展開が変わることなど茶飯事である。これも、チームディレクターとしての役割のひとつと考えているのであろう。
一方、日本のプロ野球の場合は「抗議」の趣旨がかなり違う。日本のプロ野球の審判員の生い立ちにも起因するのであるが、監督や選手達が審判員を尊敬していないように見え、またその技術に対して敬意を払っていない。ゆえに、存在もしない「抗議権」を選手が振りかざすなどという愚行が横行してくるのである。
「退場権」については後日述べるが、大リーグの「アンパイヤマニュアル」に照らした場合、日本野球の常識が、いかに世界基準とかけ離れた「非常識」となっているかがわかる。それもこれも、「Baseball」の起源を守り抜くアメリカと、猿真似で別の競技としての「野球」を特化させた日本との温度差なのかもしれない。
しかし、毎年この時期なると嫌な記憶が蘇ってくる。息子の同級生が所属していた少年野球チームの最後の卒団大会で、監督が審判の裁定に不満のあまりフォーフィッテッドゲーム(没収試合)となったのである。実に馬鹿げた愚行である。6年生の最後の試合が没収試合で終戦とは、なんとも馬鹿な指導者である。子供達に野球を通じて何を教え、何を伝えなくてはいけないのであろうか。自分が納得できない場合は、周りに迷惑を掛けてでも自分の意思を貫き通す事が、チームスポーツで伝える事なのであろうか。
私が審判員をやり始めた頃の事件であったが、それ以来「反面教師」としている。審判員や指導者として子供達と接する機会が多いが、このようなことだけは絶対に避けなければならないと自戒している。
野球のルールには、いわゆる「抗議権」は認められていない。もちろん「抗議権」の定義も項目もないのである。
これに近い言葉としては、強いて言えば【4.19】提訴試合(プロテスティングゲーム)であろうか。提訴試合とは「審判員が野球規則に違反している事に対して、監督が審議を請求する時は、リーグ会長に対して提訴の手続きをする」ことであり、「審判員の判断による裁定に対しては提訴できない」ことも併記されている。ご存知のとおり野球規則は、大リーグの「Official Baseball Rules」に準じて作成されているため、「訴訟好き」のアメリカ人向けの言葉が登場するのであろう。この規則は、日本のルールブックには「アマチュア野球では認めない」ことが明記されているから、プロ野球だけのルールであると考えていいであろう。
これに似た言葉に「アピール権」があるが、これは守備側のみに認められた権利である。アピールとは守備側チームが攻撃側チームの規則違反を指摘し、審判員に対してアウトを主張し、その承認を求める行為である【2.02参照】。よく見かけるケースとしては、走者がタッグアップした際に「走者の離塁が早い」と野手が主張する行為であろう。
アピール権を主張できる期間は、次のように示されている。
①投手が打者へ次の一球を投じるまで
②たとえ投じなくても、その前にプレイをしたり企てたりする前まで
③イニング終了の際は、守備側の投手を含む内野手がファールラインを超えるまで
この期間を過ぎた場合は「アピール権が消滅」するのである。ゆえに、次の打者のプレイが始まってから、監督さんが「タイム、さっきのプレイはちょっとおかしい」などと言っても取り合ってはくれないどころか、試合を遅延したということで警告が発せられ、なおも執拗な場合は「試合から除かれる」こととなるのである。
攻撃側にはアピール権がないのであれば、不可解な裁定があった場合は「泣き寝入り」するしかないかというと、唯一それらしい権利がある。【9.02】(b)項に「審判員の裁定が規則の適用を誤って下された疑いのあるときは、監督のみが規則に基づく正しい裁定に訂正するよう要請できる」とある。「抗議」ではなく「訂正の要請」である。言葉面を見ただけでも、ソフトなイメージが容易に想像できるであろう。
しかしプロ野球の悪影響なのか、アマチュア野球でも勘違いをしている監督が多いのも確かである。大リーグで「口角泡を飛ばして抗議」した上で「Get Out」となるシーンをよく見かけるが、あれは監督が「退場」を覚悟の上で行っている行為である。大リーグの監督たちは「審判の裁定」が覆らない事を承知しており、それに抗議をした場合は「退場」となることも「百も承知」なのである。それでも、審判員に立ち向かうのは「チームを鼓舞するため」などという理由があるようである。実際、監督の退場をキッカケに試合展開が変わることなど茶飯事である。これも、チームディレクターとしての役割のひとつと考えているのであろう。
一方、日本のプロ野球の場合は「抗議」の趣旨がかなり違う。日本のプロ野球の審判員の生い立ちにも起因するのであるが、監督や選手達が審判員を尊敬していないように見え、またその技術に対して敬意を払っていない。ゆえに、存在もしない「抗議権」を選手が振りかざすなどという愚行が横行してくるのである。
「退場権」については後日述べるが、大リーグの「アンパイヤマニュアル」に照らした場合、日本野球の常識が、いかに世界基準とかけ離れた「非常識」となっているかがわかる。それもこれも、「Baseball」の起源を守り抜くアメリカと、猿真似で別の競技としての「野球」を特化させた日本との温度差なのかもしれない。
コメント
度重なる質問に丁寧なる回答ばかりか、本文にまで取り上げて頂き、かえって
ご面倒をおかけしたのではないかと恐縮しております。
結局、今回の件は、ダブルアウトは誤審であった。が、ファールラインを越えて既に攻守が
完全に入れ替っているので、攻撃側の監督がアピールしても「時すでに遅し」と
審判団は受入れないでそのまま続行。と言うのが正しい、でよろしいですね。
インターネット上で幾つか質問したのですが『審判の目』の回答内容が群を抜いて一番!
投球練習中のボールが転がって来て塁審がタイムをかけるも、球審は気が付かず続行。
それぞれのチームが自軍に有利な判定を主張する、と言う場面はよく見ます。
それと6年生最後の試合で没収試合とは、かわいそうです。放棄試合・指導者が
帰ってしまう等、毎年あります。これ全て審判団に対する不満の表しですよね。指導者が、大人がです。6年生が9人未満なのに試合に使わないチームも沢山あります。
少年野球は「俺、コーチやる」で成れちゃうのが問題で、所属小学校がこのような
指導者のチームだったら不幸としか言い様がありません。
子供の野球じゃなく、大人の野球になってしまっているようです。
横道にそれましたが、愚息も少年野球の6年間を無事終え親子共々色々経験・勉強
したのを基に、中学のステージにチャレンジする予定です。これからも拝見させて頂き勉強
させて頂きます。また、解らない事がありましたら教えて下さい。
どうも有難うございます。
少年野球は、野球の楽しさを伝えれば100点満点であり、そこに戦術・戦略などありえません。玄人好みの技術もいりません。思いっきり打って、一生懸命に走ることができれば良いのです。
我々が子供の頃は、大人がしゃしゃり出てくるような少年野球はありませんでした。子供達が鬼ごっこをやるように、野球で遊んでいたのです。そこで、チームワークを勉強したりしたのです。
大人たちは、今自分が「このチーム」に所属していたら、野球が楽しいだろうかを真剣に考えるべきですよね。スポーツは楽しいから継続できると思います。
ご子息も、いよいよ本格的な野球に踏み込まれるようですね。我愚息も、中学硬式を始めた当時、馴染みのスポーツ店の主人から「イボイボスパイクから刃のスパイクに変わるということは、いよいよ本物の野球に近付きましたね。」と言われたのを憶えています。
これからが本格的な野球です。大好きな野球を、楽しんでやれる環境が望ましいですね。親御さんを含めて、色々な苦難をポジティブに考えて、頑張って下さい。
今回も一つご教授ねがいます。
主審をやっているときのプレー中のボール交換時の正式な扱いについてです。
雨でぬれたり汚れたりなどでキャッチャーに新しいボールを要求されあり、またランナーがいない時にキャッチャーが遠くにはじいた場合など腰元の別なボールをピッチャーにトスすることがあります。
このような場合の前後のゼスチャーについてです。
正式にはタイム、プレーが必要なのかどうか?ランナーの有無の場合についてお教えください。
今回も一つご教授ねがいます。
主審をやっているときのプレー中のボール交換時の正式な扱いについてです。
雨でぬれたり汚れたりなどでキャッチャーに新しいボールを要求されあり、またランナーがいない時にキャッチャーが遠くにはじいた場合など腰元の別なボールをピッチャーにトスすることがあります。
このような場合の前後のゼスチャーについてです。
正式にはタイム、プレーが必要なのかどうか?ランナーの有無の場合についてお教えください。
最近の中学生などは、平気でボール交換を要求してきます。ちょっと汚れたり、新しいボールでも、自分の指にフィットしなければ交換を要求する投手も少なくありません。これは大きな勘違いであり、プロ野球の見過ぎです。
そのような場合、「不満のボール」をこねてから、投手や捕手に返します。何度もやっていると、次第にやらなくなります。
さて、ご質問の件ですが、正式には「タイム」をかけてから、次のボールを渡さなければなりません。走者無しの場合は、タイムの必要はないように思いますが、勘違い防止のために、ボールデッドとするのが良いかと思います。ただし、イチイチ本塁ベース前まで出て行って「タイム」をかける必要はありません。その場で両手を挙げて「タイム」を宣告し、速やかにボールを捕手や投手に渡すのがスマートだと思います。
またベースを掃く際も、できる限りタイムをかけずに、プレイの合間に素早く掃けるように訓練されると格好が良いです。
なお、ボール交換を要求した投手が、駄目になったボールを直接ボールボーイなどに投げるケースを見かけますが、あれは禁止することをお薦めします。
基本的には、ボールの使用の可否は審判員の判断ですから、駄目になったと思われるボールを、一度点検してから交換するのが原則です。
ちなみに、ボールとロジンバッグは大会運営側が審判に委託して管理するのが通例ですから、チームのロジンバッグをお尻のポケットに入れておくのもルール違反です。
ぶしつけで申し訳ございません。ボークルール関連を見ていてまた一つモヤモヤが沸いてきました。
ランナー一塁でエンドランのサイン、好スタートで2塁可と思い気や右ピッチャーがセットから右回転で2塁送球して塁前タッチ。 これは昨年の親子試合での事で、ランナーは私でピッチャーは3拍子揃った野球通の子でした。 私はアウトと思い塁を離れましたが誰一人何もありませんでした。 もしかしてこれはボーク?
結論から言いますと、ボークには当たりません。
ルールブックの8.05にボークルールがまとめて記載されていますが、その(d)項にまったく同じ事例が出ています。
ここで重要なことは、投手板に触れている場合は第一動作で正しく二塁の方向へ踏み出していたかどうかです。大抵の投手は、走者のスタートに対する「逃げた」の声などに同様して、不細工な動作になってしまうものです。走者のスタートを予測していて、走るのを待っている心理状態であれば、スムーズに二塁に踏み出して送球できるように思います。
ですから、このような場合は、大抵の投手が投手板から足を外して送球すると思います。投手板から軸足を外した場合は、スナップスローだろうが、ノーステップスローだろうが構いません。野手と同様ですから、一塁に偽投しても問題ありません。
我チームの投手には、投手板を外してからの牽制球を指導しています。理由としましては、①基本的に牽制球の目的はアウトを奪うことではない、②投手板に触れたまま牽制球を投げようとすると、踏み込み足が不十分になりやすい、③同様にターン牽制になりやすい、④軸足が先に動きやすい、などのリスクを伴います。これらは、ボークにつながることですから、できる限り投手板を外すように指導しています。
ただしこの際に注意が必要なことは、投手板を外しますと野手と同様となりますから、大暴投などでボールデッドとなった場合は、二個の安全進塁権が与えられるということです。投手板の上からであれば、走者二塁で再開されるものが、走者三塁の大ピンチから再開されるリスクを背負うこととなるのです。
ランナーはピッチャーのセット静止から自由足が上がった瞬間での好スタートを切ったのでしたが、ピッチャーはその自由足を上げたまま軸足を支点に右回転し2塁方向に正対した時点で自由足を地面に踏み出し送球したのでありました。
ある方の筆記によりますと「自由な足が投手板の後方縁を越えたらバッターへ投げなければならないが、2塁ランナーを誘い出す(ピックオフプレー)ために2塁へ送球することは出来る、、、」とありました。
この記述からするとあの時のあのプレーはボークかなと思ったのでありました。
宜しくご教授ください。
今回のように、投手の足が挙がった瞬間に一塁走者がスタートを切ったのを勘付いて、二塁へ送球した場合でも、その送球動作が一連であれば「投球動作の中断や変更」には当たらず、一塁走者の盗塁を防ぐ目的を持った「正規の送球」となります。
しかし走者が一度スタートを切ったが思い止まり一塁へ戻ってしまった場合、またはスタートがハッタリであった場合は、「走者のいない塁への送球」となり「ボーク」を宣告されます。実際、投手が初めから二塁へ投げる意識がなければ、走者のスタートに反応して、止まる事無くスムーズな一連の動作で二塁へ送球し直すことは難しいと思います。何かしら「ぎこちなさ」を感じたならば「一度投球動作に入ってから、中断し変更した」ということで「ボーク」と裁定して良いでしょう。また、投手の足が挙がった瞬間にスタートを切ったのであれば、投手が二塁に送球した時点で走者は塁間の半分も走っていないでしょうから、「走者のいない塁への送球」と裁定しても良いかと思います。
まずは、投手の投球動作に関する指導をすることが大切です。高校生になっても投球動作が怪しい選手は沢山います。
「ボークルール」は「走者を騙す行為や意図」を感じた場合は適用するべきルールですが、どちらかというとマナーやスポーツマンシップの色合いが強いと思います。ベースボールは打者が打たなければ始まりませんから、投手は走者と勝負するのではなく、打者と勝負するべきなのです。
今また思い出してみますとバッターからの盗塁サインがあから様なゼスチャーだったように記憶しています。よって明らかな2塁送球を目的としたものだったわけでボークとはならないというのが結論でしょうか。 「抗議とアピール」での4つのインターフェアーにしても野球というのは1つのプレイに表裏正反対のルール適用を秘めるスポーツであるとつくづく感じました。 今後もよろしくお願いいたします。