外野飛球が飛んだ場合、それぞれのケースで担当者が変わる。走者なしと単独三塁のケースでは、二塁塁審が内野手より外側に位置し、レフト正面からライト正面までの範囲を担当する。これは、外野飛球のほとんどを担うという理解でよいであろう。つまり、レフトとライトがファウルライン側(外側)を向いた時は、それぞれの塁審が担当するという決り事である。
単独三塁以外で走者がいるケースでは、二塁塁審は外野飛球を一切担当しない。センターの正面からライト側は一塁塁審が担い、それ以外は三塁塁審が責任を持つ。野球は走者が反時計回りで移動することから、一塁塁審より三塁塁審を動かさない方がメカニクス的に安定する。
以上のことは、春先の審判講習会などから繰り返し繰り返し耳にし、確認して来ていることである。当然のように思われるかもしれないが、これは何度確認してもし過ぎる事はないであろう。
外野飛球を追う塁審のみが、その打球の行方を見ていたら良いのであろうか。基本は審判全員が飛球の行方を見届けることである。外野飛球を追う塁審は、その大半が一番近い位置ではプレイを見ているであろう。しかし、それがベストポジションとは限らない。プロ野球で頻繁に問題になるのが、外野が前進して地面スレスレでキャッチを試みるプレイである。ダイレクトキャッチかワンバウンドかの裁定であるが、このプレイは野手正面で見るよりも、少し横から角度を付けて見る方が確実に裁定できる。要は、いかに近くで見るかよりも、いかに良い角度で見ることができるかであろう。
しかし、シニアの場合などは飛球の滞空時間が短いため、近くに移動することが精一杯であり、良い角度を確保する余裕が少ない。
これを補佐するのが、球審を含めた他の審判員である。打球の行方はもちろん、その後継続するプレイについても見ていなくてはならない。ただ、ずっとボールを凝視している必要はない。打球にしても送球にしても、インフライトの状態の時は何も起きない。その間は目を切り、他の審判員のポジショニング確認や走者の位置を確認などに費やすのである。そして野手がプレイするタイミングでボールに目を戻すのであるが、これができるようになるには意識的に場数を踏む必要ある。
こんな場面があった。
一死走者二・三塁で外野飛球。外野手は捕球体勢に入る。遊撃手の外にいた二塁塁審が打球判定のため外野へ走った。三塁走者のタッグアップに備えて三塁塁審は三塁走者と捕球が確認できる位置へ移動する。一塁塁審は二塁走者のタッグアップの確認と打者走者の触塁を確認し、一・二塁でのプレイに備える位置へ移動する。球審は三塁のタッグアップの補助のため移動する。
センターが飛球を捕球。と思ったが、これを落球した。走者は一斉にスタートを切る。カバーに入ったレフトが、すぐにボールを拾い上げ三塁へ送球した。しかし、これが悪送球となりワンバウンドで三塁ダッグアウトに入った。
外野手の送球がアウトオブバウンズとなりボールデッドであるから、外野手の送球時の占有塁を基準に二つの安全進塁権が与えられる。二塁走者までが本塁を与えられるが、問題は打者走者の占有塁である。一塁に達していたら三塁が与えられ、二塁に達していたら本塁が与えられるのである。高く上がった飛球であったので、全力疾走しなくても一塁は回っていたであろう。
一塁塁審と球審が確認していなくてはならないであろうが、外野手の送球がダッグアウトに入るなどというサプライズまで予測していないであろうから、その瞬間、走者がどこにいたかと言われると、いきなり記憶があいまいになったりする。
「ボールを見る」という意味は、打球の結果だけではなく、プレイの瞬間や後始末までを含むのである。つまりボールデッドになるまで、プレイは継続される。ボールインプレイの状態では、いつでもジャッジする機会が訪れるということであろう。
「外野飛球も全員で確認」という言葉の裏側にある、深い意味を考えさせられたサプライズプレイであった。

コメント

nophoto
塁審見習い
2008年7月28日18:04

教えてください。
少年野球でのサプライズ・プレイ?ハプニング・プレイについてです。
・1死、2・3塁 ショートゴロで捕球前に2塁ランナーと激突(走塁線上で発生)主審のタイムで一時中断、主審のジャッジでは2塁ランナーアウト、3塁ランナーはホームイン、後に。
>同じ試合で
・無死、1塁で、セカンドゴロ。走塁線上にいた2塁手を1塁ランナーが体当たり(捕球前、捕球体制にもまだ入ってない状況)。タイムで一時中断、一時中断主審のジャッジは走塁妨害で

ファウルボール
ファウルボール
2008年7月29日12:53

コメントを頂きありがとうございます。少年野球ではハプニングは付き物ですね。守備側も攻撃側も必死ですから、出会い頭的なサプライズが頻繁に起こります。
文面から判断しますと、今回のケースはいずれも「守備妨害」で走者と打者がアウトとなります。
ケース1は、一死ですから二塁走者と打者走者がアウトとなりチェンジです。これが無死の場合は、三塁走者は戻されますから、二死走者三塁で再開となります。
ケース2は、非常に悪質な守備妨害です。これも走者と打者走者がアウトとなり、二死走者なしから再開です。
走者と野手が激突した場面で、走塁妨害を採用するのは、ボールを持たない野手、または守備を行っていない野手と激突した場合です。守備を行っているとは、打球を処理し始めてから、送球を終えるまでと考えてもらって良いでしょう。
打球を処理する位置が、走塁線上であろうと関係ありません。これは一般に「守備優先」のルールとして知られています。野手は打球を処理するために、走者を避けながら行動する余裕はないが、走者には充分余裕があるという理由からでしょう。守備体制の野手は、無防備な体制ですから、そこへ体当たりするのはスポーツマン精神に反する汚いプレイということです。ダブルプレイのピポッドマンは、接触プレイを避けるための技術を磨きますが、走者を避けてベースから離れた野手に対して滑り込む行為も、許し難い行為としてルールブックには厳しく記載されています。
少年野球の場合は、悪気があるとは思いませんが、このプレイは「故意か、故意でないか」に関わらず適用される処置です。

nophoto
山形 太郎
2008年8月28日12:38

 先日は解説ありがとうございました。
今回も先週の主審時の2つのプレーについてアドバイスいただければと思います。
1つ目は、2塁ランナー盗塁時のキャッチャーの3塁送球のボールがバッターボックス内の打者のヘルメットをかすって3塁ファールラインとデッドラインの中間辺りに止まり、ランナーは本塁生還しました。咄嗟の事なのでちゅうちょしインプレー状態で当然に守備側監督より守備妨害のアピールがありました。バッターボックス内でかつ打者の故意ではないと判断した旨を話しナッシングと処置しました。

2つめ、バッターの打球が左肩に当たってから上がった高いファールフライを捕手がダイビングキャッチ。 もちろん打者のバッターズボックス内でのことなのでファールの判定としました。
上記2プレイの判定はどうだったでしょうか?

ファウルボール
ファウルボール
2008年8月29日14:07

いつもいつもコメントを頂き、ありがとうございます。
日記のつもりで記述していても、このように反応があると嬉しい限りです。そして、このような質問を頂くたびに、私自身も勉強になり、ありがたいです。
野球のルールに関する事例は沢山ありますが、それを体験できるか可能性は、結構低いと思います。
試合前に、審判クルーでインフィールドフライのサインの確認をしますが、そのような場面になるのは年に一度あるかないかです。実際に、今まで一度も宣告したことがないベテランも居られます。
このように、事例を紹介していただき、それに対して考えることで、サプライズプレイに対する予防が出来ます。ありがたくご質問にお応えしたいと思います。

一つ目のプレイですが、山形さんの処置は問題ないと思います。野球規則6.06(c)項(打者の反則行為)には「打者が打者席の外に出るか、あるいは何らかの動作によって、本塁での捕手のプレイおよび捕手の守備または送球を妨害した場合」とあります。これは、打者による捕手へのインターフェアランス(守備妨害)を規程したものですが、ここのポイントは二点。一点目は「打者席に打者がいたか」、二点目が「打者が捕手の守備行為を妨げる行為をしたか」です。つまり、打者席を打者が外れたことにより捕手の守備行為が妨げられた、または打者席にいたとしても捕手の守備行為を妨げる行為をしたと、審判員が判断した場合、インターフェアランスを宣告するべきです。
要は「今のは、打者の妨害とは感じない」と審判員が判断した場合は、「ナッシング」の裁定となります。逆に、「打者席に居たとしても、打者の妨害への気配」を審判員が感じた場合は、「インターフェアランス」を裁定します。理由は、審判員である自分自身が感じたからで結構だと思います。
ただし、プレイの質に対する是非や、好き嫌いではなく、あくまでもルールブックに照らした基準を持つ必要があります。これも、訓練でしょう。

二つ目の質問は、打者席にいる打者に、自打球が当たった場合は「ファールボール」であり、その時点でボールデッドです。つまり、その後のプレイはボールデッド後となりますので、何も起きることはありません。「ファールボール」のジェスチャーを思い出して下さい。「タイム」のジェスチャーと同じですよね。つまり、ファールボールを宣言した時点で「タイム」、つまりボールデッドとなるわけです。
宜しいでしょうか。

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