デッド・ボール

2008年7月9日
投球が打者の身体に触れた場合は、「死球」となる。死球となった場合は、ボールデッドとなり試合は停まる。打者には一塁への安全進塁権が与えられ、それにより押し出される走者は進塁するが、それに該当しない走者は「投手の投球時点の塁」へ戻らなければならない。ボールデッドが変形して「デッドボール」となったのであろうか、「デッドボール」は造語であり、正式には「ヒット・バイ・ピッチ:hit by pith」となる。
私の同僚がハワイから来たチームが参加した大学野球のオープン戦の球審を担った際に、ユニフォームをかすめる「死球」があった。同僚は、すかさずタイムのアクションによりボールデッドとし、「デッドボール」にて打者に一塁を与えた。それに対して、ハワイチームの監督が猛然と抗議に出てきた。大リーグの監督さながらに球審の目前で、大声で英語にてまくし立て抗議する。テレビで見かける光景だなと思いながらも同僚は、冷静に対応を考えた。同僚は「ヒット・バイ・ピッチ」と応え、胸を小さく叩くと、ハワイチームの監督は納得顔でダッグアウトへ引き下がったとのことである。思わず口を突いた「デッドボール」はまったく通じなかったようである。
野球には、日本でしか通じないプレイや造語が多々ある。逆に、アメリカ独特の「暗黙のルール」もある。最も真似をしたくないのが「報復プレイ」であろう。自チームの主力選手が、死球やラフプレイで負傷した場合などは、報復として相手の主力選手にぶつけるのが当たり前となっている。マリナーズなどで活躍した長谷川繁利投手は、同僚の主力選手がラフプレイで負傷退場した際に、担当コーチから相手4番打者への「死球」を命じられて窮したことがあったと語っていた。長谷川投手が困り果てていると、担当コーチは「打者の背中を通すだけで良い」と指示した。日本の投手は、ストライクを投げる練習をしていても、打者の背中を通すコントロールは磨いてはいないから、無理もない。日本でも投手がバランスを崩したり、手元を滑らせて打者の背中を通す場面を見かけないわけではないが、そんなことで乱闘になる場面は見たことがない。しかし、大リーグでは乱闘の種になるのである。要は「喧嘩を売った」ことになるのであろう。
死球の際にはボールデッドとなるが、ユニフォームをかすめるような場合には、しっかりとタイムのポーズにて「ボールデッド」を示さなければ、塁上の走者が進塁するなどのトラブルが生じてしまう。そのような際どい「死球」は本塁付近にいる関係者、つまり「打者と捕手と球審」しか判らないことが多いのである。
二死で走者が詰まっているような場面で、スリーボール・ツーストライクとなると、自動的に走者はスタートを切る。また、ヒットエンドランや盗塁などの作戦にて走者がスタートを切っている場合もある。「死球」がユニフォームをかすめても、捕手のミットに納まっている場合は良いが、捕手が後逸などをすると話がややこしくなる。走者が先の塁を目指して、どんどん走ってしまうのである。
「死球」はデッドボールではないが、ボールデッドである。慌てず騒がず、まずはタイムのアクションで「ボールデッド」を宣告したいものだ。

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