一塁塁審の見せ所に、「オフ・ザ・バッグ」がある。
講習会で必ずと言って良いくらい繰り返される、塁審の基本動作のひとつに「送球に対して直角の位置へポジショニング」することがある。
これは、?一塁手の捕球、?打者走者の触塁、?一塁手の触塁を同時に確認できるポジションとされている。内野ゴロとなった場合、できる限りこのポジションへ素早く移動し、身体は一塁方向へ正対させた上で、野手の動きを目で追うように確認する。要は首だけ野手の方向を見るのである。内野手の手を放たれた「送球の質(高低・コースが主になる)」を確認し、一度目を切り、一塁手および走者をファインダー(視界)に収める。
この際のポイントが一塁手の足がベースを踏んでいるかである。「送球に対して直角の位置」に入ることは、これが最も良く見える位置ということである。
どうしても一塁手が送球を捕球する瞬間と、走者の足がベースを踏む瞬間の「タイムレース」に目が行きがちであるが、意外にも一塁手の足が離れるケースは多い。特に、リトルシニアでは野手の送球が安定していないことや一塁手の技術が未熟なことにより、一塁手の触塁が非常に怪しくなるのである。
この「足の離れ」を確認できた時には「オフ・ザ・バッグ」を掛けなければ選手やダッグアウトや観客が納得しないばかりか、不信感を抱かせる原因となってしまう。
明らかに打者走者が速い場合でも、一塁手がジャンプした時などは「オフ・ザ・バッグ」を掛けると非常に判りやすい。まあ、これは極端な例であり、その程度にもよるのだが・・・。
タイミング的に際どい時は、「オフ・ザ・バッグ」は効果絶大である。打者走者の触塁が一塁手の捕球より速ければ、一塁手の足の触塁に関係なく「セーフ」なのだが、際どい場合は両ダッグアウトや観客席では違って見えるものである。攻撃側は「セーフ」に見えて、守備側が「アウト」に見えるのである。ここで、「オフ・ザ・バッグ」を確実に実行すると、守備側を含めた球場全体が納得してしまうのである。これは、魔法のように効果抜群である。
それほど、効果抜群なことを知っていながら、今年はなかなか「オフ・ザ・バッグ」をコールできずに苦しんでいる。結果としては問題ないのだが、周囲への説明責任としては必要不可欠なものであろう。それも瞬時に裁定を下し、結果を示すことが審判員の役割であるから、この効果絶大の魔法は「ひとつの武器」になるのである。その武器を使えずにいることが歯痒くて仕方がない。ある程度、意識してやらなければならないだろうと考えてしまう。

フォースプレイは一塁上が圧倒的に多いのは周知のことではあるが、他の塁でも当然発生するプレイである。いわゆる塁が詰まった場面では、その先の塁上でフォースプレイが発生する。走者1塁、1・2塁や満塁のケースである。ゆえに「オフ・ザ・バッグ」は一塁塁審の専売特許ではなく、すべての審判員が会得しておかなくてはならない技術である。
「オフ・ザ・バック:Off the Bag」は、キャンバスの形状が「バッグ:Bag」に似ていることから由来しているのであろう。では、ゴム板で出来ている本塁は・・・・。
先日、満塁の場面で前進守備の内野正面にゴロが飛んだ。当然のように、本塁併殺を狙ってバックホームされた。この際の球審は、タッグプレイではないから一塁塁審と同様に、内野手からの「送球の質」を確認してから、捕手の足と走者の足に集中していた。
タイミングは、まったくの「アウト」。捕手は、捕球してから一塁へ転送した。その瞬間、球審の手が水平に広がった。球審の目には、はっきりと見えてしまった。
捕手の足が本塁ベースの前にある状態のまま、走者の足が走り抜けていくのを。
本塁ベースを凝視したまま「セーーーフ」。
捕手は振り返り、守備側ダッグアウトや観客席からは激しいブーイングが聞こえてくる。
ここが魔法の使いどころであったのだろう。「オフ・ザ・バッグ:Off the Bag」ではなく「オフ・ザ・ベース:Off the Base」の魔法を。

コメント

nophoto
そろそろコーチ兼審判
2008年5月23日15:45

はじめまして、BLOGを拝見し勉強させて頂いてます。
この日記へのコメントではありませんが、ご教授願いたく書き込みさせて頂きます。
息子が軟式少年野球して1年とちょっとになり今は、相手チームの父兄が主審、塁審を行い試合をしています。が、これはまずいかな?と思い色々と審判のやり方を探してました。
他の地域(道外)では審判講習会などを行っているようですが札幌近郊で講習会などは無いのでしょうか?
ご存知でしたら教えてください。

ファウルボール
ファウルボール
2008年5月27日16:47

書き込みありがとうございます。このような書き込みがあると、読んで頂いている方の存在を確認でき、嬉しく思います。いつでも結構ですので、書き込みして下さい。
ご質問の件ですが、軟式野球の講習会が、いつ・どこで催されているかは、残念ながら知りません。おそらく、時期としては春先に実施されているのではないでしょうか。所属されている連盟などに問い合わせてみるのが良いかもしれません。
ちなみにシニアでは、オフシーズンは社会人の審判員の方々による講習会(座学)に参加し、春先には連盟審判部主催で講習会(屋外)を行っております。また、リトルリーグも春先に屋外での講習会を実施していました。
少年野球の場合、大会ごとで外部から審判員をお願いしているケースが多いように記憶しております。
コーチと審判を兼任されているようですが、私も同じ立場ですので、その苦労は良く判ります。大変でしょうが、頑張って下さい。

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