ノー・タッグ

2008年5月1日
私の声は大きい。これは自他共に認めるところである。最近、喉の調子が芳しくないのは、年齢によるものなのかもしれない。時折、声が裏返るのが気に掛かる。
球審をやっている場合、本塁付近でのコールが多いことから、ダッグアウトおよび観客席(ほとんどが内野席に観客はいる)および本部席には十分届いているようである。投手が投球練習をしている際の「ボールバック」の掛け声は捕手より大きくなってしまう。捕手の面目もあるので、今シーズンからは出来る限り叫ばないように心掛けているが、ついつい叫んでしまう。ある意味、それが試合を活気付かせる一因になっていると考えているから、「元気な球審」を演じてしまう自分を感じている。
早い話が、目立ちたがりなのであろう。「審判員は目立っては駄目だ」とベテラン審判員から、何度も注意を受けているが、性分ゆえになかなか直らない。今後も、毎試合注意をしようと肝に銘じるところである。

先日の試合で、二塁塁審に配置された。二塁塁審は、グラウンドの中央に位置することが多く、センターラインで試合を観る事ができる利点がある。ダイヤモンドの外と内での役割が明確になっていることから、一度身に付けると楽しいポジションである。ただし、どのポジションも楽しくはあれ「楽」なことは無いのは周知のとおりである。
走者がいるケースで、二塁塁審が内に入った場合、そのジャッジのコールは外向き(外野向き)となることが多い。二塁キャンバスより本塁側に位置することから、キャンバス上でのジャッジは外野向きに振り向いた状態となるのである。
一塁塁審や三塁塁審の場合、内側にポジショニングするケースは少ない。外野方向を向いてジャッジ&コールすることはほとんどない。このことからも、二塁塁審の特殊性がわかるであろう。
この特殊性が、ジャッジのコールの足を引っ張ることがある。外野に向かってコールすることから、野手には聞こえるが、ダッグアウトや観客席・本部席には聞こえないことがある。
そのためにジェスチャーがあるのであるが、アウトやセーフは良いとして、時として困ることがある。
先日の試合では、投手の二塁牽制球に二塁走者が完全に引っ掛かった。遊撃手が二塁走者の帰塁を待ってタッグし、高らかに「アウト!!」とグラブを突き上げた。
タイミングは完全にアウトである。二塁走者のヘッドスライディングは二塁キャンバスから50?手前の位置にあったのだ。
判定は・・・・「セーフ!!」
私の目は、遊撃手のグラブが二塁走者の腕の間の地面を力強くタッグするのを見てしまったのだ。それが、はっきり見えた以上は「タイミング・アウト」とはコールできなかった。
誰が見ても「アウトのタイミング」のプレイを、一番近くで見て判定するべき審判員が「セーフ」というには、衆人を納得させる理由を明らかにする必要があるのであろう。一塁でのフォースプレイにおける「オフ・ザ・バック」もそれである。
私は、ちょっと考えてから「ノー・タッグ!」と大声で叫んだ。ただし、二塁キャンバスを見たままの姿勢で、つまり外野方向を見たままで叫んだのである。
球場全体は、まだざわついている。
仕方がなく、守備側のダッグアウトに向かい、両手を叩いて「ノー・タッグ」と叫んだ。
情けないのは、この時「ノー・タッグ」のジェスチャーが思い浮かばなかったことである。「オフ・ザ・バック」のジェスチャーでも変だろうし、手の甲を叩くのも違うように思う。
同僚に聞いたところ、「セーフのジェスチャーをしながら、ノー・タッグと叫ぶしかないかな」と言われた。
それでは、外野向きにコールすることとなるから、やはりダッグアウトや衆人には判らないだろう。明確に判るジェスチャーがあれば良いように思う。
今度、ベテラン審判員に聞いてみようと思う。

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