遅延行為

2008年4月30日
春先は投手の不正行為が多い。これは投手が成長過程であるから致し方ない部分もあるが、そうでない部分もある。技術的に未熟であり、投球動作が安定しないことによるボークは、指導して矯正していくことが重要である。あまり、目くじらを立てて「ボーク」を宣告するのもどうかと思うが、その場で区別がつかないのも事実である。
「鉄は熱いうちに打て」の格言とおり、早いうちに不正を指摘してあげるのも審判員の努めであろうと考えるようにしている。「注意」よりも「ボーク」の宣告が一番効果の上がる方法であるのは間違いない。過激な発言としては、「このボーク宣告」で当該投手が投手としての自信を喪失しても致し方ないとまで考えている。この忠告を真摯に受け留め、矯正に努めることが出来る選手が「投手」として残ることが出来るのであろう。
技術面の稚拙さによるボークは、指摘する方も、される方も比較的気楽さがある。逆に、指導者が放置していたことへの憤りの方を感じるくらいである。
問題は、精神面の狡猾さによるボークである。時折、打者と勝負せずに走者と勝負する投手を見かける。しきりに走者を気にして牽制を繰り返す投手である。実は、正規の牽制球を投じた場合、それにより走者が「アウト」になるケースは、すべてが走者側に問題がある。つまり、「走者がうっかりしていた」か「走者のリードが大きい」か、または「走者が機敏さに欠けていた」かである。投手の牽制が上手かったために走者が「アウト」になることはありえないのである。
投手は、打者への投球も、走者への牽制球の送球も、踏み出して投げることを義務付けられている。この「踏み出し」の基準を明確に理解していない投手が「ボーク」を犯すのである。また、「投手板」を外した場合は、野手と同じ条件であるから、ターン送球もクイック送球も可能である。しかし、投手板を外した状態で打者に投げることは出来ないのであるから、走者側からは「牽制球」が来ることは明白であり、軸足が外れた段階で戻れば良いのである。それでも際どいプレイとなるのは、「投手板」の外し方に疑惑があるからであろう。「投手板」の外し方は規則書に明確に書かれている。「投手板の後縁、またはその延長線上より後ろへ外す」のが正解であるが、プロ野球の影響なのか「投手板の横」や「投手板の前」に外している投手がいる。そういう投手に限って、「素早く」動くのである。だから、走者も審判員も騙されるのである。ボークの考え方としては、「騙される」=「ボーク行為」としても構わないのであろう。審判員が騙されたと感じた瞬間に「ボーク」を宣告できるようになれば良いのだが、なかなか難しい。「どこがボークか」と聞かれた時に、明確に答を持たなければ「ボーク」を宣告することは出来ないであろう。
基準が不明確な行為の代表格が「遅延行為」であろう。何をして試合を「遅延」させたと考えるかであろう。日本人は数字の基準を欲しがるが、この「遅延」に関する明確な基準を規則書は示していない。明確に基準がないということは、審判員の感性任されていると考えて良いように思う。つまり、審判員が「遅い」「ダラダラしている」「早く、打者に投げろ」と感じたら「遅延行為」として扱ってよいのであろう。

8・05 塁に走者がいるときは、次の場合ボークとなる。
(h) 投手が不必要に試合を遅延させた場合。

例えば、グラブにボールを入れた状態で牽制球を投げる動作をした場合、ロージンバックを投げる動作をして走者を威嚇した場合、投げる気もないのに盛んに小さく腕を振る行為などは「遅延行為」と考えてよいであろう。また、山なりのキャッチボールのような牽制球も、これに該当すると考えて良い。
要は試合会場にいる選手・指導者・観客はもとより、審判員も含めてテンポの良いゲームを所望し、選手に「ハリーアップ」を鼓舞しているにも関わらず、それに水を差すようなワガママナ投手の行為は「不正投球」「不正投法」として扱って良いということである。
野球は打者が打つスポーツである。それには、投手が打者に向かって投げることが前提である。走者に牽制球を多投することは、野球をやることにはならないのである。
先日、ソフトバンクの新垣投手が「遅延行為」と思われる行為で「ボーク」を宣告された。一昔前なら、絶対に宣告することの無かったであろう。たまたま見ていたことにより、「遅延行為」の基準が出来た気がしている。
早速、二度も「ザッツ・ボーク・遅延行為」と叫んでしまった。
ボークを宣告された投手は「狐につままれた」ような表情を浮かべていたが、「無駄な動作は試合の進行を妨げる」ことを説明すると、笑顔で「ハイ」と応えていた。意外に図太いものだと感心させられもしたし、大事な夏の大会前に勉強したことは良かったのであろう。
選手諸君、駆け引きは戦術面でするべきであり、狡猾な手法だけは用いて欲しくないものである。

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索