魂のエース

2007年12月13日
寂しいニュースを耳にした。
近年はすっかりチーム力も充実し、毎年のように優勝争いに加わる千葉ロッテマリーンズであるが、苦しい時代もあった。そんな時代を支えた、「魂のエース」こと黒木知宏投手が現役引退を発表した。2001年に右肩を痛め、苦しいリハビリ生活が続いていた。それ以来、ほとんど登板機会もなかったが、今年は2軍戦で一年間投げ抜くことができ、来年の「復活」に向けて希望が見え始めた時だっただけに、10月2日の戦力外通告は非情にさえ思えた。
私は、札幌ドームが落成し、その後西武や巨人が準フランチャイズとして使用する噂が流れた頃には、どうせ来るなら「ロッテが良いな」と思っていた。それはフロントを含めたチームカラーが、北海道に会っているように感じたことと、「ちゃんと野球をやっている」チームであったからだ。それは、千葉マリンスタジアムの雰囲気を見ていれば、誰にでも感じることであろう。あのファンこそが、「サポーター」であり、応援団なのであろう。そんな無印良品のようなロッテが、功労者である黒木をクビにしたのである。非情さを感じると共に、黒木の怪我の影響の深さを感じたものである。
しかし、黒木は現役にこだわる発言をした。ロッテ球団も「任意引退」とはせずに、「戦力外通告」をした辺りに、他球団からの誘いを期待したよう思われる。その結果、彼が選択した行動は「誘いを待つ」という受動的な姿勢であった。それが、12球団合同トライアウトにも参加しない姿勢となってしまった。

黒木投手の「復活への思い」を支えていたのが「野球が好きだ」であったのであろう。だから、苦しい試練を乗り越えられた。であれば何故、「野球の原風景」である「ガムシャラさ」や「泥んこになって」という姿を見せなかったのかが悔やまれる。どうして、桑田投手のように、自ら売り込む能動的な姿勢を見せなかったのが悔やまれる。
他球団のフロントや首脳陣は、黒木の実力は知っているであろう。だから、トライアウトの結果が惨憺たるものであったとしても、「合否」には関係なかったのだと思われる。
トライアウトの場は、「野球への情熱」をどのようにアピールできるかである。どれほどまでに「泥んこになって」白球を追えるかであろう。その熱き思いさえ見せることができれば、チャンスは広がるのである。
「魂のエース」といわれた男から、魂の炎が消えてしまったということなのであろうか。
打たれても打たれても、インコースを責め続ける「気迫の投球」を、もう一度見てみたかった。それが「夢を伝える」ということではないのではあるまいか。
寂しいニュースであった。

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