激突

2007年10月20日コメント (2)
ボールゲームは「接触」という観点から見ると、大きく二分できる。サッカー・ラグビー・アメリカンフットボール・バスケットボールやアイスホッケーなどのように激しいコンタクトプレイが随所に見られる競技と、バレーボール・テニス・卓球・バトミントンなどのように「接触」自体が全くない競技とに分けられる。
コンタクトプレイがある競技は、ひとつフィールド内に所定のプレイヤーが、競技ルールに基づいて縦横無尽に動き回ることが特徴的である。接触プレイが随所にあるため、当然妨害行為などの不正プレイも多く、それに対してはるペナルティが科せられる。サッカーは警告(イエローカード)と退場(レッドカード)が個人に科される。バスケットボールは5ファウルで退場となり、アイスホッケーやラグビーなどは退場時間が決められている。いずれも、妨害プレイや粗暴なプレイに対するものであり、技術的な反則(サッカーのオフサイドなど)とは明確に区分して厳しい罰則が科せられることとなる。場合によっては、そのゲームのみならず、以降の出場にまで及ぶ重いペナルティとなる場合も少なくない。
一方、接触のない競技はネットなどでフィールドが明確に区分されており、自チームのサイドのみでプレイすることが特徴となっている。接触がないことから、ラフプレイも少なく、反則のほとんどがテクニカルなものとなっている。当然、スポーツマンシップに反する行為には厳罰が下る。その際たるものが、審判員に対する暴行・暴言などであろう。判定に対して不満を露にした挙句、審判員に食って掛かるプレイヤーや指導者に対しては、毅然たる態度で臨んでもらいたいと思っている。野球に限らず、他のスポーツでも審判員の地位の危うさが嘆かわしくなるシーンを目にするのは辛いものである。

いずれの競技も、フィールド内には同じ人数のプレイヤーで競技がスタートする。当たり前のように聞こえるが、野球に当てはめて考えると、その異質性に気付かれるであろう。
野球の場合、他のボールゲームに見られるようなゴールがない。また、攻守交替により選手が入れ替わることから、フィールド内には同人数のプレイヤーが常に居るわけではない。攻撃時と守備時でポジショニングが大きく変化するのである。
ある意味で可笑しなスポーツであり、良くぞ考え付いたと感心するばかりである。このプレイスタイルやルールの難しさが、野球の世界的な普及を阻んでいるのであろうが、野球を理解するとその奥深さに惹きつけられるのは間違いない。

では「接触」という観点から見た場合、野球はどちらに含まれるであろう。
野球はフィールドを区切ってなく、守備側と攻撃側のポジショニングが入り組んでいる。
投手は投手板を含むマウンドに立ち、バッタースボックスに立つことを義務付けられた打者に向かう。それぞれの塁には、その塁の名のついた野手がいるにはいるが、必ずしも「その塁」だけを守らなければならない訳ではない。それらの野手の目の前を走者が走り去る。走者は塁間を結ぶ架空の幅の走路を走らなければならない。野手は、守備の必要があれば走路に入ることを許されている。「ダイヤモンド」と呼ばれるフィールドのどこに打球を打っても良いし、守備側の選手はフィールド内の全てのボールに守備機会がある。
ひとつのボールを奪い合うゲームではないのでサッカーなどに比べればコンタクトプレイは少ないが、攻守が入り組んだ状態となっているため「接触」はある。
野球のゲーム構成上は、「接触」プレイは想定していない。投手は打者にボールを投げ、打者がそれを打ち返す。走者となったら、次塁を狙い、得点することに全力を傾注する。野手は打球を捕ったり、送球したりしてアウトカウントを稼ぐ。これらのプレイに「接触」は想定されていない。
しかし、実際には多くの妨害行為が行われている。事の大小や重要性、試合展開などにより「流してしまう」こともあるであろうが、色々な妨害行為がある。
「接触」をゲーム構成上想定せず、認知していない野球において、実際に接触プレイが起きた場合にはどう処理するべきであろう。
基本的には「接触」が起こった時点で、「妨害」が発生したことになる。どちらが不利益を被ったかによって裁定を下すようにルールブックには書かれているが、当然「どちらとも言えないケース」がある。それと、不可抗力もあるであろう。
しかし、「不可抗力」や「故意ではない」ということで、「接触」が何もなし「ナッシング」にはならない。いずれかを判定しなくてはならないのである。攻撃側のインターフェアランスか、守備側のインターフェアランスかをである。

次の実例を、皆様ならどう判定されるであろうか。
『二死一三塁、セカンドゴロ。二塁手が前進し捕球しようとしたが、前方へ小さく弾いた。そのボールを手で掴もうとした所へ、一塁走者が走りこみ二塁手と激突した。二塁手は倒れ込み打球を処理しきれずにいたが、一塁走者は二塁へ、打者走者は一塁を駆け抜けた。当然、三塁走者はホームインした』。

さて、裁定や如何に。
接触プレイには波乱が含まれており、意外と多いことを肝に銘じていないと、実際に自分が当事者となった場合、裁定を下せなくなってしまう。「接触」は「妨害」であり、どちらかにペナルティが科されるのである。

コメント

nophoto
山形 太郎
2008年7月22日18:27

某名前で失礼します。山形在住で今年より子供のスポ小でにわか審判を経験しているところです。大変勉強になっております。
ところで、裁定ですが、二塁手が1度守備機会を行っているので両者不可抗力のナッシングと思うのですが?
いかがでしょうか?
ご教授おねがいいたします。

ファウルボール
ファウルボール
2008年7月29日13:06

コメントを頂き、ありがとうございました。
御回答が遅くなり申し訳ありません。公私共に多忙なため、なかなか更新できずおります。
ご指摘のとおり、私が観戦した試合の裁定は「ナッシング」となりました。
しかし、文中にも書きましたとおり、「激突」が起きた時点で、守備側か攻撃側のインターフェアランスが発生したと考えなければなりません。
しかし、野手はボールを弾いている、つまりエラーをしてしまっているのですから、一度守備機会を使っているであろうという考え方もあると思います。
これは、大リーグの審判マニュアルにも記載されている事例であり、非常に判断の難しい裁定です。その場に、自分が居た場合、本当にそのように処置できるかの自信はありません。
ここでのポイントは、「二塁手が前方へ小さく弾いた」ところです。つまり、手の届く範囲に弾いたボールを処理しているわけですから、まだ守備の継続中と見てよいと思います。
これは、何歩か移動しなければならないような場合には、一度守備を終了していると考えるべきでしょう。
いずれにしても、不可抗力であろうと、接触があった場合はインターフェアランスであり、それにより生じた不利益を取り除くことが必要であるということです。
ちなみに、実例のケースは「守備妨害」で走者をアウトにして無得点のチェンジとするのが良かったのではと考えております。

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索