野次将軍

2007年9月30日
大リーグで審判員が暴言を吐き出場停止となった。審判員の出場停止処分は極めて珍しい。事の仔細は、当事者達が口をつぐんでいるため不明だが、あるプレイに対し抗議をした際に暴言を吐いたようである。被害者は抗議をした選手であり、なんと自軍の監督に制止された際に膝の靭帯を損傷したようである。大リーグの監督の役割のひとつが、選手の身代わりとなって退場覚悟で審判員に抗議をすることがある。この監督も、選手がペナルティを課せられてはチーム力ダウンとなるので、必死に制止に向かい、勢い余って選手に怪我を負わせてしまったのであろう。プレイオフ進出を争っているチームの主力選手だけに、監督も頭の痛いところであろう。
それにしても、どのような暴言を吐いたのであろうか。大リーグにおける審判員の地位の高さが仇になったような事件である。
それにしても言葉の力は恐ろしいことは、あの名選手・フランスのジダンが犯したワールドカップの「頭突き事件」を思い起こしても明らかである。「汚い言葉」を投げかけた選手も、その場では勝利に向い必死であり、日頃の紳士的な立ち振る舞いが信じられないような選手も多々いる。
シニアでも酷い野次が横行していた時期があったが、最近はかなり改善されてきた。昨年、あまりの酷さに大声で「野次は止めろ」と叫んだ事があった。私は声が100m先まで届く自信がある。その声で叫んだのであるから、当然球場中に響き渡った。その瞬間、球場中がシーンと静寂したのを克明に記憶している。しかし、あまりの大人気なさに反省もしたものである。
先日の試合でも、酷い野次があった。それも、控え選手であるから、おそらく一年生であろう。末恐ろしさと、この選手はどのような環境で育ち、どのような指導を受けているのであろうか、と考えさせられた。しかし、試合中であるから見過ごすわけにはいかない。昨年であれば、その場で叫んでいただろうが、「中学生相手に怒鳴った所で大人気ない」とグッとこらえ、攻守交替のインターバルにベンチへ向い指導者に対して柔らかに「野次が酷いので止めるように」と伝えてみた。
ひどく後悔した。
指導者の対応は、ベンチに踏ん反り返った姿勢を崩さずに内容を聞いた上で、子供達に向かい「こう言ってるぞ。分かったか」である。
こんな指導者だから、子供達が腐るのだ。こんな大人と付き合っていると、こんな大人しか見ていないと、碌な大人にならない。
審判であれ、指導者であれ、連盟役員であれ、子供達が野球を楽しむ事に対して汗を流しているのであり、その汗の価値はまったく変わるものではない。
審判員をやる以上は、チームの好き嫌いがあってはならないと考えているので、平素な対応を心掛けているが、そりの合わないチームはある。どうにも好きになれないチームは、確かにある。このチームの、この指導者の下では審判員はやりたくないと思うことは、確かにある。
少年野球から高校野球では、「子供たちのために」という合言葉で、多少の「わがまま」を許容してしまっていることがあるように感じている。それに携わる大人たちが、「子供達の野球」を守るという大義名分で、変な遠慮をしていることがあるように感じている。
イチローや松井、松坂などが大リーグで活躍したり、日本ハムや楽天などが野球後進地に根付くなどもあり、一時期サッカー人気に圧され気味であった野球人口が、ここ数年回復傾向と言われているが、少子化が進み、スポーツの多様化なども相まって、我々が少年時代と比べると野球人口が減少傾向にあることに変わりはない。
だからこそ、野球関係者はプレイヤーの原石である子供達を「大切に扱う」のではなく、「正しく扱う」ことを肝に銘じる必要があると考えて止まない。
私の審判員としての理念は「モラル・マナーを守れる選手が、ルールのある野球をやる資格がある」である。今後も、これを変えるつもりは毛頭ない。
相手を貶めるような「野次将軍」に成り下がった選手が不幸でならない。

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