遅延行為
2007年9月22日今年の冬に大幅なルール改正があったことはご存知の通りである。野球規則自体は、過去20年近くほとんど改正されずに運用されてきた。その反動のように「Official Baseball Rules」は20数箇所にわたり改正され、33項目にわたる条項が加筆訂正された。
この改正の大きな柱となっているキーワードは「時間短縮」である。
我々が子供の頃、野球と並び国民を熱狂させたスポーツ(というより娯楽であろう)にプロレスがあった。ジャイアント馬場とアントニオ猪木が全盛期であった。金曜8時のゴールデンタイムにテレビ中継されていたため、その時間には大衆浴場から客がいなくなるとまで言われた事もあった。それより以前には、力道山という国民的英雄がテレビの普及と共に、戦後日本の象徴であった。
このプロレスでは、チャンピオンベルトを争うようなタイトルマッチになると「時間無制限一本勝負」などと紹介されていたが、テレビ中継の関係もあるのであろう、大体が30分程度で決着がついたものである。
野球はまさに「時間無制限」のゲームである。アメリカの四大スポーツといえば、ベースボールの他にアメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケーであるが、ベースボール以外はタイムゲームである。アメリカンフットボールなどは、残り時間の駆け引きにより戦略・戦術が大きく左右される場面が多く、時間をコントロールすることも実力の一端である。
しかし野球は、時間制限がないことがスリリングな逆転劇などを産む要因となっている。最終回、何点勝っていようとも、何点ビハインドがあろうとも、最後の3アウトが宣告されるまで試合続行が可能な限りゲームが終わる事はない。それが、衝撃的な大逆転などを含むゲームを演出したりする。試合には流れがあり、一端流れを手放すと、どんなに点差を離していても、勝利さえも手放してしまう事はしばしばある。日本のプロ野球などでは、終電の時間に間に合わないとか、球場周辺の治安維持など、野球とは無関係の理由で決着をつけない「12回引き分け」という変則ルールを採用している。これ自体はBaseballの起源に相反するローカルルールであり、「箱庭野球」と言われる根源になっているのであろうが、日本国民としては「諸般の事情」を知るだけに納得せざる得ないのであろう。大リーグでは「決着がついたら日付が変わっていた」などと言う事が年に一度はあるし、諸般の事情を考慮して「サスペンデッドゲーム」というルールを活用して「後日続きをやろう」となる。今年もヤンキースが、当日予定していた試合の前に「先日の続きをやろう」となり、変則ダブルヘッダーを組んだ事があった。その際のチケットは、サスペンデッドを採用した試合の半券で、次の試合も観戦できるという粋な計らいまでやられた。アメリカらしいファンサービスである。日本のプロ野球も、このぐらい度量が広くならなければ、プロスポーツとして生き残っていけないかもしれない。
それにしても「時間無制限」で、のんびりと野球を楽しんでいるのは日本とアメリカぐらいのもので、サッカーに比べると、スポーツとしての認知度・普及度は著しく低い。ワールドベースボールクラッシクが、今後継続されるか否かは不明であるが、まずは野球を普及させるためには、「時間無制限」の問題を解決しなければならないことは周知の事となりつつある。
これをうけて、20数年改正されていなかった野球規則に大ナタを振るってまでも、「時間の概念」をルール化しようと考えたのであろう。
我々審判員も選手の交替時間の短縮を図るため、選手に「全力疾走」を促すことを率先して行っている。しかし、プレイヤーに「時間短縮」の意識と協力がなければ、単なる「口うるさい審判」になってしまう。
野球の戦術・戦略には「相手をだます」というものが、未だに蔓延しているようであり、選手達のプレイに染み付いてしまっている行為も多い。
ある試合で、投手が一塁へけん制球を投げた。
試合展開は、守備側が10点以上の大差をつけて勝利目前の状態。この回を抑えればコールドゲームというシチュエーションである。ゆえに、守備側は控えの選手が大挙してラストイニングのポジションについている。もちろん、投手の背番号も重たい。そんな選手達にとってはチャンスであり、大きな点差は関係なく精一杯のプレイをしようとする。この「精一杯のプレイ」が曲者であり、それまで選手が培ってきた技術を駆使して、ひとつのアウトを獲ろうとする。
そんな背景の下、四球で出してしまった一塁走者に向かい、左投手がけん制球を投げた。走者のリードは小さいにも拘らず、けん制球を投げた。それも「山なりのけん制球」を投げてしまった。
一塁塁審であった私は、点差を忘れて(実は重々分かっていたが・・・)、「That’s Balk!!」と叫んでいた。
野球規則のボークの項目には、以下のような記載されている。
【8.05】塁に走者がいるときは、次の場合はボークとなる。
(h)投手が不必要に試合を遅延させた場合。
「時間短縮」が叫ばれた今年のルール改正を考えると、遅延行為を見逃すわけにはいかない。
まあ、「試合展開を読め」という苦言は承知の上ではあるが、見逃す事ができない性分であるから、致し方ないと言う事である。
この改正の大きな柱となっているキーワードは「時間短縮」である。
我々が子供の頃、野球と並び国民を熱狂させたスポーツ(というより娯楽であろう)にプロレスがあった。ジャイアント馬場とアントニオ猪木が全盛期であった。金曜8時のゴールデンタイムにテレビ中継されていたため、その時間には大衆浴場から客がいなくなるとまで言われた事もあった。それより以前には、力道山という国民的英雄がテレビの普及と共に、戦後日本の象徴であった。
このプロレスでは、チャンピオンベルトを争うようなタイトルマッチになると「時間無制限一本勝負」などと紹介されていたが、テレビ中継の関係もあるのであろう、大体が30分程度で決着がついたものである。
野球はまさに「時間無制限」のゲームである。アメリカの四大スポーツといえば、ベースボールの他にアメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケーであるが、ベースボール以外はタイムゲームである。アメリカンフットボールなどは、残り時間の駆け引きにより戦略・戦術が大きく左右される場面が多く、時間をコントロールすることも実力の一端である。
しかし野球は、時間制限がないことがスリリングな逆転劇などを産む要因となっている。最終回、何点勝っていようとも、何点ビハインドがあろうとも、最後の3アウトが宣告されるまで試合続行が可能な限りゲームが終わる事はない。それが、衝撃的な大逆転などを含むゲームを演出したりする。試合には流れがあり、一端流れを手放すと、どんなに点差を離していても、勝利さえも手放してしまう事はしばしばある。日本のプロ野球などでは、終電の時間に間に合わないとか、球場周辺の治安維持など、野球とは無関係の理由で決着をつけない「12回引き分け」という変則ルールを採用している。これ自体はBaseballの起源に相反するローカルルールであり、「箱庭野球」と言われる根源になっているのであろうが、日本国民としては「諸般の事情」を知るだけに納得せざる得ないのであろう。大リーグでは「決着がついたら日付が変わっていた」などと言う事が年に一度はあるし、諸般の事情を考慮して「サスペンデッドゲーム」というルールを活用して「後日続きをやろう」となる。今年もヤンキースが、当日予定していた試合の前に「先日の続きをやろう」となり、変則ダブルヘッダーを組んだ事があった。その際のチケットは、サスペンデッドを採用した試合の半券で、次の試合も観戦できるという粋な計らいまでやられた。アメリカらしいファンサービスである。日本のプロ野球も、このぐらい度量が広くならなければ、プロスポーツとして生き残っていけないかもしれない。
それにしても「時間無制限」で、のんびりと野球を楽しんでいるのは日本とアメリカぐらいのもので、サッカーに比べると、スポーツとしての認知度・普及度は著しく低い。ワールドベースボールクラッシクが、今後継続されるか否かは不明であるが、まずは野球を普及させるためには、「時間無制限」の問題を解決しなければならないことは周知の事となりつつある。
これをうけて、20数年改正されていなかった野球規則に大ナタを振るってまでも、「時間の概念」をルール化しようと考えたのであろう。
我々審判員も選手の交替時間の短縮を図るため、選手に「全力疾走」を促すことを率先して行っている。しかし、プレイヤーに「時間短縮」の意識と協力がなければ、単なる「口うるさい審判」になってしまう。
野球の戦術・戦略には「相手をだます」というものが、未だに蔓延しているようであり、選手達のプレイに染み付いてしまっている行為も多い。
ある試合で、投手が一塁へけん制球を投げた。
試合展開は、守備側が10点以上の大差をつけて勝利目前の状態。この回を抑えればコールドゲームというシチュエーションである。ゆえに、守備側は控えの選手が大挙してラストイニングのポジションについている。もちろん、投手の背番号も重たい。そんな選手達にとってはチャンスであり、大きな点差は関係なく精一杯のプレイをしようとする。この「精一杯のプレイ」が曲者であり、それまで選手が培ってきた技術を駆使して、ひとつのアウトを獲ろうとする。
そんな背景の下、四球で出してしまった一塁走者に向かい、左投手がけん制球を投げた。走者のリードは小さいにも拘らず、けん制球を投げた。それも「山なりのけん制球」を投げてしまった。
一塁塁審であった私は、点差を忘れて(実は重々分かっていたが・・・)、「That’s Balk!!」と叫んでいた。
野球規則のボークの項目には、以下のような記載されている。
【8.05】塁に走者がいるときは、次の場合はボークとなる。
(h)投手が不必要に試合を遅延させた場合。
「時間短縮」が叫ばれた今年のルール改正を考えると、遅延行為を見逃すわけにはいかない。
まあ、「試合展開を読め」という苦言は承知の上ではあるが、見逃す事ができない性分であるから、致し方ないと言う事である。
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