8回ノーヒット・ノーランの記録が生まれた試合の序盤には、互いに訪れかけたチャンスを自らが潰している。
勝利チームは序盤の無死一塁のケースで、送りバントが打者の反則打球(打者の足がバッタースボックスから出た状態でバントした)となりチャンスが膨らまなかった。

一方敗戦チームの初回の攻撃では、先頭打者が空振り三振したが、スライダーの切れが良過ぎて捕手が確捕できず、前方へ弾く間に打者は三振振り逃げで一塁へ走った。捕手は慌てずにボールを拾い一塁へ送球したが、これが打者走者に当り一塁線のファウルゾーンへ転々。打者走者は、それを見て次塁をうかがう行動を起こそうとしたが、球審の「タイム!!」の声が響いた。
などと、劇画調に書いてみたが、この時の「球審」は私である。早い話、何を見てボールデッドとし、プレイを停めたのかである。先日の北海道日本ハムvs千葉ロッテの試合(9月15日紹介済み)であったようなことが起きたのである。

球審の仕事のひとつに、本塁一塁間の中間地点から描かれている「スリーフットレーン」を打者走者が走っているか、の確認作業がある。特に、投手〜捕手〜一塁手を結ぶ三角地帯で発生する守備機会には、いわゆる「ラインアウト」による「守備妨害(インターフェア)」が生じる。
これを判定するのは、一塁塁審ではなく球審である。一塁塁審のポジショニングの基本のひとつに「送球に対して直角に入る」がある。つまり、このケースでの一塁塁審のポジショニングは、捕手からの送球に対して直角であるから、一二塁間線上付近の内側に切り込んだ位置となる。この位置では、打者走者がスリーフットレーンを走った否かを判定しにくく、また送球に視線を獲られるため、走者の足の位置までは見ることが出来ないのである。
そこで、走者無しまたは走者一塁の場合の内野ゴロでは、球審が打者走者の後を追うように塁間中間地点付近まで駆けていくのである。
今回の場合は、捕手がボールを前方へ弾いたため、ボールを処理する捕手と打者走者の邪魔にならないよう、三塁側から回り込んで、走者と捕手をやり過ごし、いつもより少し大き目に内側へ入り走者を追った。
打者走者は右打者であるから、当初(中間地点の45フィートまで)はファウルラインの内側を走りがちになるが、スリーフットレーンが描かれた区間を走れば何事もないプレイとなるが、打者走者はそのままファウルラインの内側を走ったのである。
捕手の一塁送球は走者に当たり(当たったように見えたが、当たらなくても邪魔にはなった)、一塁手は捕球できずにファウルゾーンを転々とした。
ここで問題となるのは、捕手から一塁への送球ライン上に打者走者が被ってしまったことである。打者走者は「走ってはいけない場所を走ったために」送球の邪魔になってしまったのであるから、インターフェア(守備妨害)に値する行為となる。
これが三塁ゴロを捌いた三塁手の送球であれば、打者走者がファウルラインの内側を走ったとしても、三塁手の送球や一塁手の捕球の妨げにはならないことから、「インターフェア(守備妨害)とはならない」と解釈し、プレイを流すことができるのである。

以前、NHKの特番で、ある名門高校野球部の特集をやったことがあり、その番組の中で「三塁手のグラブのある方向へ走者が身体を寄せたために、送球が走者の背中に当たり、ファウルゾーンへボールが転々とする間にホームイン」という場面を「さすが名門高校。高等技術の走塁です」と絶賛し、規則委員会や審判連盟などの各方面から猛抗議を受けた話は有名である。

この逸話を耳にする限り、スリーフットレーン内を走っていても、グラブ側に身体を寄せるなど、故意に守備行為を妨げたと判断された場合には「インターフェア(守備妨害)」を適用しても良いということであろう。これは当事者である審判員の判断に拠るところが大きいが、「スポーツマンらしくないプレイ」は何らかの妨害と判断して良いという基準なのであろう。とは言え、抽象的であることに変わりはないが。

ところで、本塁一塁間のスリーフットレーンは、何故ファイルラインから外側にしかないのであろうか。他の塁間は塁線の両側にスリーフィートあるのに、本塁一塁間だけが半分しかない。
これは、一塁と本塁は駆け抜けられることと関係があると考えられる。つまり、ファウルラインの内側も走行を許し、打者走者が駆け抜けた場合に一塁手との激突が生じる可能性が高くなり、事故が多発することが考えられることから内側を走ることを禁じているのであろう。実際に、内野からの送球を捕球する際の一塁手は無防備状態であるから、この状態に打者走者が激突すると大怪我をするであろう。
昔、巨人の王貞治一塁手の足は「捕球より早く離れているのではないか」という疑惑を耳にしたことがある。実際にビデオ再生で見たらどうであったのであろうか。その真偽よりも、一塁上での激突により王選手が大怪我をした場合には、世界的な本塁打記録が生まれていたかは疑問である。

ソフトボールの一塁ベースが二つ並んでいる理由の一端が、危険防止なのかもしれない。
それにしても、ベースが二つあると一塁塁審は大変であろうと同情してしまう。

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