リクエスト

2007年9月13日
審判員の裁定には、「判定」と「適用」がある。
「判定」は、「ストライクorボール」、「アウトorセーフ」、「フェアorファウル」の判断を下すことである。
一方「適用」はプレイに対する野球規則の適用の是非である。
ルールブックには【9.02 審判員の裁定】の項目には、「判定」に対する「絶対性」と、「適用」に対する「柔軟性」が示されている。そしてそこには「抗議権」は存在せず、「規則適用に関する要請依頼」のみが監督に与えられているに過ぎない。

「判定」に対する「絶対性」「最終性」は、【9.02】(a)項に示されている。

【9.02 審判員の裁定】(a)打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレイヤー、監督、コーチ、または控えのプレイヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。
【原注】ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレイヤーが守備位置または塁を離れたり、監督またはコーチがベンチまたはコーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向ってスタートすれば、警告が発せられる。警告にも関わらず本塁に近付けば、試合から除かれる。

ここに示されているとおり、「審判員の判断に基づく裁定は最終のもの」であり、異議の余地はありえないものである。
これをプレイヤー側から観た場合は、例え理不尽と思える裁定に対しても異議を唱えるなという意味であるとともに、審判員側から観ると「判断の精度」を挙げるとともに安定した判断を下すことを求めていると読むべきであろう。審判員は「偉い」存在ではなく、「尊い」存在となるよう努力しなければならない。「あの審判員が下した裁定であれば、間違いない」と試合の進行を委ねられるよう努める事を促している項目であると、改めて自分自身を律する規則として読み返してみることとしている。

それでは、「適用」に対する「柔軟性」「訂正の可能性」は、【9.02】(b)項に示されている。

【9.02 審判の裁定】(b)審判員の裁定が規則の適用を誤って下された疑いがあるときには、監督だけがその裁定を規則に基づく正しい裁定に訂正するように要請することができる。しかし、監督はこのような裁定を下した審判員に対してだけアピールする(規則適用の訂正を申し出る)ことが許される。
(c)審判員が、その裁定に対してアピールを受けた場合は、最終の裁定を下すにあたって、他の審判員の意見を求めることはできる。裁定を下した審判員から相談を受けた場合を除いて、審判員は、他の審判員の裁定に対して、批評を加えたり、変更を求めたり、異議を唱えたりすることは許されない。

ここでは、「審判員の裁定の適用の訂正を要請できる」ことが述べられており、他の審判員に対し意見を求めることが出来るとある。
例えば、投手の投球や野手の送球がダッグアウトなどに入った場合に、走者をどのように進めるかなどの判断を、他の審判員に意見を求めることができるということである。また、その裁定に規則上の誤りがあれば、訂正するように要請できるのである。
判断・裁定を下すべき審判員は、それぞれのプレイに対して役割分担されてはいるが、必ずしも絶対ではない。担当の審判員よりも、裁定を下すのに適したポジショニングをしている審判員もいる。また、プレイが起きている場所との距離や角度によっては、両チームや観客への説得力に欠ける場面もある。それらを補うために、「協議」をする余地を残しているのであるが、あくまでも規則の「適用」に関する部分である。
「今のプレイは、アウトかい?それともセーフかい?」などと、「判定」の領域まで「協議」を組み入れていては「ゲームにおける進行係」としての役割が果たせない。

審判員の裁定に対するアピールプレイで多いのが、「ハーフスイングのリクエスト」である。
前記の【9.02】の【原注(Official Baseball Rulesにある原文)】には以下のように書かれている。

【原注】 ハーフスイングのさい、球審がストライクと宣告しなかったときだけ、監督または捕手は、振ったか否かについて、塁審のアドバイスを受けるよう球審に要請することができる。球審は、このような要請があれば、塁審にその裁定を一任しなければならない。
 塁審は、球審からの要請があれば、ただちに裁定を下す。このようにして下された塁審の裁定は最終のものである。(中略)
 監督が、ハーフスイングに異議を唱えるためにダッグアウトから出て一塁または三塁に向かってスタートすれば警告が発せられる。警告にもかかわらず一塁または三塁に近づけば試合から除かれる。監督はハーフスイングに関して異議を唱えるためにダッグアウトを離れたつもりでも、ボール、ストライクの宣告について異議を唱えるためにダッグアウトを離れたことになるからである。

これは、球審が「ボール」の判定をした場合に、守備側にのみ与えられた権利である。つまり「ボール」が「スイング・ストライク」になることがあっても、「ストライク」が「ボール」に変更されることはない。また、この「リクエスト」は守備側の監督または捕手にのみ与えられており、コーチや他の野手などがアピールをしても、球審は応える義務はないのである。
中学シニアの競技規定では、捕手にのみ「リクエスト」の権利を認めており、監督には直接球審にアピールする権利は無い。
この辺りが徹底していないのか、ダッグアウトから「振った!振った!スイング!」という声が聞こえるのに、捕手が知らん振りという場面を見かける。捕手がリクエストしてくれれば、球審は塁審にスイングの是非を問えるのであるが、新人戦レベルでは理解度が低いように思われる。
それとも「ダッグアウトで叫んでも、アピールに応えてくれないのだから」と諦めているのであろうか。
または、打者に一番近くにいるからスイングの有無を判断できるのであろうか。
リクエストを上手く使うことも、捕手の技術につながると思われるのだが、如何であろう。

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