スクランブル発進

2007年9月7日
私は審判仲間から、トラブルメーカーのイメージを持たれているようだが、先日はまさに「トラブルメーカー」たる由縁であった。
昨年来、私の行く所(球場)では何かが起きている。
試合時間が長いのは日常茶飯事である。2時間ゲームは当たり前のようになってしまっている。
正常に進行している試合にも関わらず、1点差を争うクロスゲームになることで長時間ゲームになる場合もある。これは精神的に疲れる。
延長戦も多い。逆にコールドゲームは少ないように思う。それはそれで、緊張感を持ちながらゲームに挑めるのであるから結構なことではあるが、如何せん試合展開がややこしくなる。

この日は、第一試合の球審を務め、1時間45分という試合時間で納めることができた。私としては上出来であり、両チーム点を取り合った割には、試合時間は短縮できたと思っていた。
第二試合は控審判であったが、少し早めの昼食を食べながら、塁審の動きを追っていた。穴が開きそうになった場合、最悪は控え審判も交えた協議となることから「見ていなかった」では済まなくなる。緊張感と集中力は、ある程度高めていなければならない。この試合は2時間弱であったため、開会式による試合開始の遅れを完全に取り戻した。
そんなこんなで、第三試合で私は二塁塁審に入った。
今年は、球審と二塁塁審の出場機会が断然多い。時折、練習試合などで一塁や三塁をやると、戸惑うこともある。人間、同じことばかりやると慢性化してくるのと、他のことの技術を忘れてしまうという二重のリスクが生じる。慣れることは恐ろしい。そして、苦労して身に付けた技術を忘れることは恐ろしい。
この試合は最終的には、1点を争うゲームとなったことから試合時間は1時間30分程度で終了した。
何もなければ非常に良い一日であったのだが、やはりトラブルメーカーであった。
実際には、私が直接的な関与をした訳ではないのだが、それに巻き込まれたのは事実である。

この第三試合は、本格派投手と技巧派投手の一騎打ちとなった。当然、球審も一球・一球への集中力を高める努力をしていたのであろう。二塁塁審として、判定を見ていいたが、実に安定したジャッジであった。コース・高さが安定しているのである。「このまま最後まで安定していると良いな」などと考えていると碌なことはないのが世の常か。
3回の表に事件は起きた。打者が打った打球はファウルチップとなって後方へ鋭く飛んだ。
その打球が、球審である同僚の左肘内側に直撃したのである。直撃後は「痛そう」な素振りを繰返し、一塁側ダッグアウトから冷却スプレーを借りて吹き付けていた。
実は私自身、当たった瞬間の記憶が無く、どの程度の打球であったか不明なのであるが、同僚はジャッジ継続不可能となってしまったのである。
通常は「控審判」が負傷退場した審判のジャッジを受け持つのであるが、球審交替という非常事態で、私にお鉢が回ってきたのである。
正に「スクランブル発進」である。
試合は、両チーム無得点の状態で凌ぎあっている緊迫した状態である。このような好ゲームに水を差すわけにはいかない。私は大急ぎで防具を装着した。
新しいボールを受け取り、5分間の中断の後に「プレイボール」を宣言した。
それからは、試合の流れを壊さないように考え、テンポとメリハリを意識してジャッジメントした。
スクランブルの割には冷静でいられたのは、この試合が本日3試合目の球審であり、目が十分に慣れた状態であったのと、連続ではなく時間的なインターバルがあったことが疲れを感じずに良いコンディションで挑めた理由であったと思う。
また、同僚の代行を務める責任感が、いつもよりもメリハリの利いたジャッジメントになったのだろう。
ただし「判定のテンポ」を意識しすぎたあまり、判定が早めになり勝ちではあったのは事実である。
このような経験も、なかなか踏めないであろう。
先日は長い一日であり、色々な経験を踏ませていただいた一日であったが、「トラブルメーカー」としての面目躍如といったところか。

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