同時はどっち

2007年8月30日
『同時はセーフだろう』。
『いやいや、アウトだよ』。
このような議論を小学生の時にしたことを、おぼろげだが憶えている。
その理屈は分からなくても、それなりに言い訳じみた屁理屈はあったようだが、残念ながらそこまでの記憶はない。しかし、確かに議論していた。
現実の世界で『同時』ということが可能性としてあったとしても、「人間の目」での判断には当然限界があり、実際の判定では守備側と攻撃側のプレイの勢いの差や、審判員の見る角度などにより誤差やブレが生じるのは致し方ないことである。つまり、コンマ何秒という『差』を見極めジャッジすることは不可能な事であるし、現実として必要のない事なのであろう。
がしかし、審判員は正確を期すために、日々動体視力を磨き、フォーメーションに関する教科書に何度も目を通し、努力を怠らないのである(私はアマチュアゆえ、それ程に突き詰めていないが)。
これだけ準備をやっていても、ジャッジには「ブレ」は生じるものである。そのブレが『同時』のプレイに『差』を付ける。時には、正解とは逆方向(つまりはミス)へのブレもあるであろう。
しかし、それも「人間がやる判定」であるが故に、通常は「問題なし」として考えて良いのであろう。

さて、では実際に『同時』に見えた時には、どのようにジャッジメントすれば良いのであろうか。
ルールブックを読み始めた頃、『同時は、どっち!?』を探したことがある。
はっきりと書いてくれていれば良いのだが、そのようなレアケースはルールブックには書かれていない。
正確には、「書かれていない」と思っていた。ルールブックの奥深さが読めなかったのである。
確かに、その言葉では書かれてはいなかったが、別の言い回しで書かれていた。

最初に見つけた言い回しは、『10.00記録』の項にあった。10.05『安打』の【付記】には、失策か安打か迷った時の「考え方」が明記されている。

10.05 次の場合には安打が記録される。
 【付記】本条各項の適用にあたって疑義のあるときは、つねに打者に有利な判定を与える。打球に対して非常な好守備を行なったが、続くプレイが十分でなくアウトをとることができなかった場合などには、安打を記録するのが安全な方法である。

この条文を拡大解釈して、『同時』で迷った場合も「打者に有利な判定」を与えて良いと考えていた。
そもそも、野球は「打者」のゲームである。投手は打者のリクエストに従い、打ちやすいコースに投げ、それを打者が打つ。リクエスト通りに投じられなければ「ボール」をカウントしていたのである。実に打者が有利な、打者がわがままなゲームであった。このルーツから紐解けば、『同時』は攻撃側有利な判定、つまり「セーフ」で良いのであろうと、個人的に理解していた。

最近、野球関係のある書物を読んでいて、ひょんなことから「正解」を見つけてしまった。やはり、それはルールブックにあった。

6.05 打者は次の場合アウトになる。
(j)打者が第三ストライクの宣告を受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁に触れる前に、その身体または一塁に触球された場合。

この条文は、打者がアウトとなる場合のひとつのケースである。
簡単に言うと、「内野ゴロを打った打者をアウトにするためには、打者走者が一塁に触れる前に、ボールを持った野手が一塁ベースか打者走者にタッグする」。
つまり『同時』は、「一塁に触れる前」ではないので『セーフ』ということである。

屁理屈のようだが、これが正しい解釈なのであろう。このような、読み方をしなくてはならないのであれば、再度、ルールブックを紐解く必要性を感じている。

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