審判員は試合前と試合後にミーティングを行う。試合後の会話は、控え審判からの指摘事項と自己反省が主である。控え審判からは、「クロックワイズメカニクスが機能していたか」や「基本的なポジショニング」についてが多く、次回の試合のテーマとするべく、技術向上が目的の指摘となる。細かくは「球審のマスクは左手で外す」とか「球審が投球に合わせて構えるタイミング」などであり、上級になってくると「あの妨害行為は採るべきか」とか「あの投球姿勢はボークとすべきか」などである。「ストライクゾーン」やジャッジ全般についての指摘は、よほどの事がない限り無いことが多い。
「ストライクゾーン」はある程度の個性が出やすい。「低目が好き」な方や「インコースが辛い」方など様々であり、それが一試合の中で安定していれば大きな問題とはならない。
確かにルールブックには「ストライクゾーン」についての記載があり、ある程度の「目安」が示されてはいるが、そこは人間の目が判断する事であるから、「アバウト」となるのは織り込み済みということである。四角四面に、厳格にと言っても限界がある。人間がプレイし、人間がそのプレイをジャッジするのが野球である。ある程度のブレは許容されると考えるべきである。

では、試合前は何をミーティングで話し合っているのであろうか。試合前は「その試合」ごとのクルーの取り決め事項を確認している。まずは、球審が内野における打球の分担の確認と、インフィールドフライのサインをどの時点でどのように出すかを示す。「内野における打球」とは、一塁線と三塁線の際どい打球を誰が「フェア・ファウル」を判定するかであり、「ベースより手前は球審の分担で、その奥は塁審に任せる」が基本となる。また、内野フライもベースより手前は球審がダイヤモンド内に入りコールするのが基本となっている。
この基本事項は毎試合確認してきたが、私自身が大きな勘違いをしていた。「ベース手前の打球のフェア・ファウルは球審」というのを、「ベース手前で切れたか否かの判定を球審が行う」とずっと思ってきた。その上で「ベース際は塁審の方が近いし、見やすいよな」と密かに思ってきた。
この勘違いのため、私が球審をやった際のライン際の際どい打球のジャッジは、塁審と「かぶる事」が非常に多かった。
先日、公式戦の給水の際に「ベースより奥で処理した打球は塁審に任せた方が良いよ」という指摘を受け、「えっ!?」と固まった。私は勘違いに気付き、指摘して頂いた方に「こっそり」と、『「ベース手前は球審、奥は塁審」の意味は「ベース手前で処理された打球は球審で、奥で処理された打球は塁審」という意味ですか』と聞き返した。答えは『そうそう』である。
完璧に勘違いしていた。そして、今まで密かに思ってきた疑問が氷解したのである。そう考えると、大抵の場合は野手(一塁手と三塁手)がベースより奥で守っているから、強烈にライン際を襲う打球の処理は、「ベースより奥」で行われる。ゆえに、その判定は塁審の分担となることが断然多い。
今まで「ダブルコール」が無かった事が『不幸中の幸い』であったなぁと胸を撫で下ろした次第である。
聞いてみなくては分からない勘違いはあるものである。
しかし、なかなか染み付いた癖は直らない。ライン際に打球が飛ぶと、ついついしゃしゃり出てしまう。
その癖が、ついに練習試合で「ダブルコール」という形を産んでしまった。球審の私が「フェア」、塁審が「ファウル」。
「フェア」がノーボイスであり、塁審の「ファウルボール」のコールが大きかったために事なきを得たが、反省しきりのジャッジであった。

コメント

nophoto
匿名希望
2009年5月11日17:12

私もそのように理解しておりました。プレーされた位置がベース手前か後方かというお話しですが、三塁手がベース手前で守っており、三塁線打球のフェア、ファウルが主審ですか?それとも塁審ですか?教えてください。宜しくお願いします。

nophoto
ファールボール
2009年5月13日0:01

匿名希望様
2年前の記事に投稿頂き、ありがとうございます。古い記事を閲覧されている方もおられることに驚きながら、感謝しております。今後もベースボールアンパイヤの目を磨いていかなくてはと心新たにしております。
さて、一塁線および三塁線のフェア・ファールの判定についてですが、基本的には「ベース手前は球審、ベースを含んで奥は塁審」ということで良いです。三塁手が前進守備でベース手前で打球を処理した場合は球審が判定可能ですが、前進守備の三塁手のグラブに触れずに三塁線を抜けるような痛烈な打球の判定は、例えベース手前でファールゾーンに切れたとしても、三塁手の陰になり球審が判定するのが困難なこともあります。このような場合は、塁審が判定した方が選手・ベンチ・観客に対して説得力が有ると思います。
「判定の同調」を「同時判定」と考えていると、「フェア」と「ファール」を宣告してトラブルとなる可能性が高まるということです。「同調」は「同時」ではなく、時間差をつけて判定を告知することです。
ベース付近の痛烈な当たりは塁審が判定する方が説得力があるでしょうし、ベース手前のバントなどの判定は球審が行う方がスマートです。
よくあるケースは、ベース手前でファールゾーンを転がる打球を野手が触れる前に塁審が「ファール」をコールしてしまうことです。これは野手が触れてからか、打球が止まってから「ファール」を宣告することが良いですし、担当するのは球審だということを理解しておくことがクルーの信頼関係を築けると思います。

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